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スペシャル対談精子と卵子の「老化」には、正しい情報を味方に 岡田 弘(泌尿器科医) ×河合 蘭(ジャーナリスト)

大正時代の驚異的な妊娠力と精子力。現代の私たちが味方にするものとは

河合 私は早く妊娠しなくなることがあるという知識が広がってほしいと思うと同時に、妊娠というものは、実はけっこう遅くまで起き得るんだということも知ってほしいと思うのです。
妊娠する・しないを左右する卵子の老化は、本当に個人差が大きく、そのことを知って欲しくて、『卵子老化の真実』を執筆したというところがあります。その過程で大正時代の記録を調べたところ、なんと50代の出産が3000件以上あったのです! 驚異的な妊娠力ですよね。


岡田 その時代は、若い頃から長期間にわたり、多くの子どもを産んでいました。妊娠中は卵巣が休まりますし、子宮は老化の影響が少ない。当時の女性は妊娠力が高かったのでしょう。また、男性の精子力もあったと考えられます。「子どものいる男性は精子機能が落ちにくい」という先ほどの結果にも符合します。


河合 現代のライフスタイルでは見えなくなってしまったけれど、人間には本来、信じがたいような妊娠力が備わっていると私は思っているのです。それは特定の誰かが産めるかどうかということではなく、遺伝子に書かれている未知の力へのロマンというか、そういうものですね。現代は妊娠、出産の話がリスクマネージメントをどうするかという話になりやすい時代です。でも本当は、生殖や出産、育児というのは、どこをとっても神秘的でロマンに満ちている。
だから不妊治療というとつらいイメージが強いですけれど、もっと生命の不思議さを感じる時間としてとらえてはどうかと思います。また、不妊治療をしている方にも、その先にある出産のことを知って欲しいですし、もっと不妊を専門とした医師と妊娠、出産、育児を専門とする人たちが交流してほしいと思うのです。


岡田 少子化対策にも関係しますが、「子どもがいる暮らしは楽しい」と身近なところで感じられることが大切。例えば、小学校の先生が自分の子どものことを日常的に話す、というように。


河合 そうですね。不妊、妊娠・出産、子育てが、日常の中でもっと語られる社会が理想ですね。男女や年代の別なく。


岡田 現在の日本では、夫婦の6組に1組は子どもができなくて悩んでいるといわれます。そうした人も巻き込んで、社会全体で子どもを育てるサポートをしていくのが、これからの社会のあり方ではないかと思います。


河合 「社会全体で子どもを育てる」という意識ですね。


岡田 制度がつくられて動くのか、民間が取り組むのか、または女性が自分たちのネットワークでシステムをつくるかもしれません。 


河合 男性の皆様にも「よろしくお願いします」と、ぜひ言いたいです。


岡田 そのためにも僕らは、精子と卵子について、不妊や妊娠・出産について、これからも正しい情報を発信していきましょう。


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河合 蘭さん 著書紹介

『卵子老化の真実』(河合 蘭著、文春新書)
「本当のところ、何歳まで産めるの?」という今や誰もが抱く疑問にていねいに回答。妊娠力の低下や不妊治療、出生前診断、ハイリスク妊娠、産後の疲労や育児などについて真相を徹底取材し、30代以降に妊娠する人を応援する一冊。韓国でも翻訳版刊行が決定。
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