精子の基礎知識

精子がつくられるまで

精子は、陰嚢の中にある精巣でつくられる。
精巣は硬い繊維から出来ている伸縮性のない白膜に覆われていて、その白膜から続く中隔という組織によって、200〜300の小葉(しょうよう)という小部屋に仕切られている。それぞれの小葉には3〜4本の精細管(せいさいかん)があり、ひとつの精巣には全部で1000〜1200本ほどの精細管がある。精細管には、精子のもとになる精粗(せいそ)細胞、それを育てるセルトリ細胞、そして精細管の周囲には、男性ホルモンを産出するライディヒ細胞がある。
精粗細胞は、セルトリ細胞から栄養をもらいながら、精母細胞、精子細胞へと成長し、精子は74日間かけて精子になる。
この精子が、つくられる過程のどこかに問題があると、元気な精子がつくられにくい「造精機能障害」となり、精液検査で「精子が少ない、ないしは精子がみあたらない」「精子の運動率が悪い」といった結果を招くことになる。

精巣の構造

精巣の構造

精子形成の様子

精子形成の様子

顕微鏡で拡大した、正常な精巣組織

顕微鏡で拡大した、正常な精巣組織

精子の移動ルート

精巣で74日間かけてつくられた精子は、精細管から精巣上体へと移動して受精のための能力を備える。さらに全長約40cmにも及ぶ精管を進み、射精されるまでには14日間かかる。つまり、精子がつくられ始めてから射精するまでは、約3カ月間かかるということ。
この精子の移動ルートのどこかに問題があると、射精した精液中に精子が見あたらない「無精子症」 と診断される。この場合、精巣で精子がちゃんとつくられていれば、「精路通過障害」ということで、閉塞性無精子症である。

射精までの精子の通過ルート

射精までの精子の通過ルート

射精のしくみ

パートナーとのセックスで射精するためには、通常は勃起しなくてはいけない。
勃起のしくみは、性的興奮が高まると脳の中枢神経が反応して、陰茎の中にある海綿体に血液が流れ込むことで起こる。陰茎にある3本の海綿体のうち、2本の内部に血液が充満し、その圧力によって、ぶらりとしていた陰茎がかたく、太くなって起き上がる。これが勃起である。

ペニスの断面

ペニスの断面

射精は、性的興奮が頂点に達すると、脊髄の射精中枢が反応して、精巣上体が収縮、さらに精管のまわりにある尿道括約筋や海綿体筋、前立腺・精嚢などが規則的な収縮を繰り返す。これらの筋肉の動きの圧迫を受けた精子は、前立腺液と精嚢液からなる精漿(せいしょう)とまざり、尿道口から勢いよく飛び出す。これが射精である。
射精時には膀胱の出口は閉じて、膀胱側に射精液が戻らないメカニズムが働く。しかし、糖尿病性末梢神経障害や骨盤内手術後には、このメカニズムがうまく働かないために射精液が膀胱に入る「逆行性射精」になることがある。

射精のしくみ

視覚や聴覚など五感の刺激が脳に伝わって、性中枢が指令を出し、勃起が起こる。さらに、脊髄の射精中枢が反応、筋肉などの動きによる反射で射精する。

勃起は視覚や聴覚、気持ちの高揚など、五感の刺激が脳に伝わって起こる。一方、射精は筋肉の収縮で起こる。勃起して射精するには副交感神経(勃起)と交感神経(射精)とからなる異なる2種類の自律神経のメカニズムが複雑に働いている。ストレスやプレッシャーなどの影響で自律神経系の調節機構が乱されると十分な勃起や射精ができない、長時間のパソコン作業で外界からの刺激が極端な視覚情報に偏ると脳が十分に興奮できず膣内射精障害を招くなども、自律神経とかかわりがあることを物語っている。

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