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精子がうまくつくれない

OAT症候群(乏精子症・精子無力症・奇形精子症)

精子の数が少ない、精子の運動率が低い、正常形態の精子が少ない。
これらを総称して、「OAT症候群(oligoasthenoteratozoospermia syndrome)」という。
精液検査の結果(精液所見)は、1つの項目の数値だけが低いというケースは少なく、精子濃度・精子運動率・正常形態精子率の3つがいずれも低いことが多い。つまり、ほとんどのケースがOAT症候群といえる。
このうち、原因不明の「特発性造精機能障害」は、男性不妊全体の4分の3に及ぶ。
これらは、精子をつくる機能(造精機能)に何らかのトラブルがあって、元気で正常な形の精子がつくられにくい状態だと考えられる。その結果、精液所見が悪くなっているといえる。

精液検査の標準値
(WHOラボマニュアルに準拠している場合)

精液 1.5ml以上
pH 7.2以上
精子濃度 1ml中に1500万以上
総精子数 3900万以上
※3900万未満の場合は乏精子症
精子運動率 40%以上
※40%未満の場合は精子無力症
正常形態精子率 4%以上
※4%未満の場合は奇形精子症

正常な精液

元気な精子がたくさん確認できる(精液所見が正常な場合)。

OAT 症候群の精液

OAT症候群(精子の数が少ない、運動精子が少ない、奇形精子が多い)。

精索静脈瘤

■こんな症状のある人は要注意!

  • ・陰嚢のふくらみ方や感触が左右で違う
  • ・長時間、椅子に座っていると陰嚢が痛む。精巣が引き下げられるような痛みがある。
  • ・脚を組み替えたときに痛みがある  など

一般的には自覚症状がないが、瘤が大きくなってくると、自分でも疑うことができる。
お風呂上りに陰のうの皮がたるんだ時に判りやすい。
泌尿器科を受診して調べることをお勧めする。

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)は、精巣から心臓へと血液が戻る際に、精巣静脈は約50〜60cm上方の腎静脈に流入する。
通常は一方弁が機能して上向する血流のみであるが、機能が悪いと腎静脈から精巣に向かって逆流が起こり、精巣につながる部分がふくらんで瘤(こぶ)のようなものができた状態のこと。
精索静脈瘤があると精巣の温度が2〜3度上昇することが多く、熱に弱い精巣の造精機能が低下して、OAT症候群を招くことになる。
さらに、精索静脈瘤がある男性の精子のDNAは断片化(壊れている)率が高いことも知られている。
精索静脈瘤の治療には手術があり、これにより精液所見が改善されるケースがある。

精索静脈瘤の治療

精索静脈瘤イラスト

お年寄りの足に、でこぼこと血管が浮き出ている状態、それが静脈瘤だ。これが精巣近くで起きたのが精索静脈瘤。痛みや違和感などの自覚症状があるケースは少ない。
一般男性では約10%、男性不妊外来を受診する人では30〜40%で精索静脈瘤が見つかる。

ホルモン分泌異常(内分泌異常)

造精機能障害のうち、数は少ないものの比較的見つかりやすい原因に「ホルモン分泌異常」がある。これは精子をつくるために必要な下垂体ホルモンの分泌が少ないもので、「低ゴナドトロピン性精巣機能低下症」という。
不足したホルモンを補うホルモン補充療法を行うことで、精液所見の改善が期待できる。

精子をつくるためのホルモンの流れ

精子をつくるためのホルモンの流れ

精子をつくるために複雑なホルモンの流れがある。視床下部からのGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の分泌が少ないと、下垂体への指令が働かず、LH(黄体形成ホルモン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌量も低下し、脳下垂体でのLH、FSHの産生が障害されていても、精子がうまくつくられない。

無精子症

無精子症とは、射精した精液の中に精子がひとつも見あたらない場合をいう。
精子の通り道(精路)に問題がある「閉塞性無精子症」と、精路に問題はないが精巣の精子形成に問題がある「非閉塞性無精子症」の2種類がある。
無精子症、すなわち「精子が存在しないこと」を確かめるには、正しい方法で精液検査が行われていることが重要である。
精液を遠心分離器にかけて、精液中の細胞をすべて集めてから時間をかけて、全体を顕微鏡で観察する。
1回の検査で精子がいなくても、「無精子」と判定するには早すぎる。
少なくとも、2回以上(出来れば3回以上)精液検査を繰り返して、精子がいないことを確認してから確定診断とする。

精液検査

元気な精子が数多く見られる精液。

精液中に精子が見つからない状態。

閉塞性無精子症

精子はつくられているものの、精子の通り道である精管が詰まって、精子が射精されない状態。わかりやすい例としては避妊手術のパイプカット(精管結紮術)がある。 治療には、ふさがった精管を開通させる「精路再建術」があり、これにより精管がつながれば自然妊娠が期待できる。 また、精巣から精子を採取する「TESE」や「MD-TESE」を行い、精子が見つかれば、それを用いて顕微授精をする方法もある。 このほかの閉塞性無精子症には、生まれながらにして精管が形成されていない先端性両側精管欠損症(CBAVD)、精路の尿道につながる最後の部分である射精管がふさがっている射精管閉塞などがある。

閉塞性無精子症のイメージ

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精子の通り道(精管)が詰まって、精子が先に進めない閉塞性無精子症。

精管-精管吻合術

精管物合術イラスト

パイプカットなどで閉塞した精管を再建する精路再建術のひとつ、「精管-精管吻合(ふんごう)術」。この場合、精管は約95%で開通(*)、精子がつくられていれば自然妊娠が可能に。

(*)精巣側の精管の断端まで精子運ばれていること、尿道側の精管が開存していることが条件。

非閉塞性無精子症

無精子症のうち、精路に問題はないが精巣の精子形成に問題があるもの。
精子がつくられている可能性があれば、最先端の治療として「MD-TESE
(顕微鏡下精巣精子採取術
)」がある。

非閉塞性無精子症イラスト
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