実際に男性不妊外来を訪れた場合、どのようなことを行うのか紹介しよう。
男性が生殖や性機能について相談するところ
子どもを望むカップルなら、女性が不妊検査を受けるのと同時に、男性もちゃんと検査を受けるべき。というのも、WHO(世界保健機関)の調査では、不妊の約半分は男性側に原因があるからだ。 また、産婦人科で精液検査を受けて、もしも問題があると診断されたら、男性不妊に詳しい泌尿器を訪ねてほしい。たとえば、精液検査で「精子の数が少ない」と言われた人でも、再度検査すると何でもないことは多い。 「男性不妊外来」では、精液検査に加えてさまざまな検査を行い、診断・治療をする。生殖機能の健康診断をするつもりで、気軽に足を運ぼう。
精液検査 精液検査を受ける 精液検査の方法■こんな人は早めに受診しよう!
・性病にかかったことがある・39℃以上の熱を出したことがある
・睾丸をぶつけて腫れたことがある
・睾丸を下ろす(停留精巣)手術や鼠径(そけい)ヘルニアの手術をしたことがある
・睾丸の袋(陰嚢)に水が溜まったことがある
・抗がん剤治療や放射線治療を受けたことがある
・ED気味だ
・潰瘍性大腸炎やクローン病で薬を飲んでいる
・神経科や精神科、メンタルクリニックにかかっている
・再婚だが、前の結婚でも子どもに恵まれなかった など
これらは精子をつくる機能に影響したり、精子の通り道をふさいだり、射精に影響することがある。 なかなか妊娠しない場合は、男性不妊の可能性を考えて、専門医を受診しよう。
基本の検査
問診、視診・触診、精液検査、ホルモン検査(血液検査)、超音波検査が基本の検査。
必要に応じて、細菌検査やMRI検査、染色体検査や遺伝子検査などを行う。
問診
あらかじめ問診票に必要事項を記入して提出する。(ホームページでダウンロード可能なので、受診前にあらかじめ記入して持参しよう。)
それをもとに、医師が詳しく質問をしていく。
カップルで受診するケースも多い。
医師に話しにくいことでも、問診票なら答えやすい。
正直に記入しよう。- 問診票
視診・触診
体の様子を目で見る視診では、ホルモンの影響で特徴的な様子が見られる場合がある。
下着を外してベッドで診察する触診では、陰嚢の大きさや硬さ、精管の有無や腫れや痛みなど、おもに外性器の状態を確認していく。
また、精索静脈瘤の検査は立った状態で行う。寒いと精巣が上にあがるので、暖かい部屋、あたたかい手で行うのが基本。
陰嚢(精巣)の大きさを調べるオーキドメーター。プラスチック製の精巣の模型で、
おおよそのサイズを測る。正確なサイズは次の超音波検査で測定する。
診察室の様子。右手のベッドに横になって診察を
受ける。
精液検査
マスターベーションで射精した精液を調べて、精液量や精子の数、運動性や形を検査する。
病院内の採精室や、トイレ、またはあらかじめ自宅などで、
専用容器に射精して、提出する。- 精液検査を受けよう!精液検査の手順
ホルモン検査
精子の形成には、ホルモンが関係している。それらを血液検査によって調べる。
LH(黄体形成ホルモン) | 1.4~6.7mlU/ml |
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FSH(卵胞刺激ホルモン) | 1.9~11.6mlU/ml |
テストステロン | 2.01~7.5ng/ml |
超音波検査
陰嚢に器具をあてると、超音波(エコー)で中の様子がモニターに表示される。精巣の大きさなどを調べるほか、腫瘍や結石、 精索静脈瘤が見つかる場合もある。
超音波検査の器械。モニターに超音波画像が
表示される。
必要に応じて行う検査
MRI検査
脳下垂体に腫瘍があることが考えられるときに検査する。もし脳下垂体に腫瘍があると(プロラクチン産出腫瘍が多い)、ホルモン分泌に異常をきたすことがある。 また、精路通過障害が疑われるときには、精巣、精嚢、前立腺のMRI検査を行う。
染色体検査・遺伝子検査
染色体異常が原因の男性不妊もある。疑われる場合には、染色体の検査や精子形成に関わる遺伝子に異常がないかどうか調べる検査を行う。
- 子どもという目標があるなら、まずはおのれを知るべし!
- 子どもがほしいなら、自然妊娠が望める状態かどうか、まずは検査を受けよう。
また、すでに産婦人科で精液検査を受けて「男性不妊」と診断された方は、不安な気持ちで診察室に足を運ぶ。僕はまず、その不安を和らげ、正しい情報提供と検査から診察をスタートする。「男性不妊外来」は男性の味方、ぜひ気軽に相談を。