女性の妊活と仕事

2017.09.05 | 不妊症全般, 新知識

現在、女性の社会進出と若い世代の賃金が低く抑えられていることが相まって、共働きのカップルが増加しています。国内で、妊活時期の女性が労働についている割合に、地域によって差があるのでしょうか?

3世代以上が同居していた大家族の時代から、夫婦(カップル)だけの最小単位の家族構成が増加している時代ですので、大都市を抱える県とそれ以外では、家族の大きさが違うため、妊活・子育てを手助けできるマンパワーの差が色濃く出てくると、容易に想像できると思います。実際そうでしょうか?

総務省の国勢調査(平成27年)のデータから、厚生労働省のまとめた資料(http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/16c.pdf)によれば、都道府県別の女性の生産年齢(15歳~64歳)の労働力率は、島根県が74.6%と最も高く、福井県(74.2%)・富山県(73.9%)・山形県(73.5%)・鳥取県(73.4%)がこれに続いています。

労働力率が低いのは、奈良県が61.1%と最も低く、兵庫県(63.9%)・神奈川県と大阪府(64.4%)・埼玉県(65.6%)となっていました。
25歳~44歳の子育て世代に限って労働力率を見ても、同様の傾向があり、島根県(85.3%)・山形県(84.9%)・福井県(84.6%)・鳥取県(84.2%)・富山件(84.0%)でありました。子育て世代の労働力率が低いのは、奈良県(71.1%)・神奈川県(71.6%)・兵庫県(71.9%)・大阪府(72.6%)・埼玉県(72.9%)でした。

地域毎に、年齢別の女性の労働力率を示すと、図1-4のようになり、どの県もM字型の分布を示していました。(図1-4)

Figure1

Figure2

Figure3

Figure4

この中で、労働力率が高く、子育て世代での低下率(仕事から離れる率)が低い県の代表として、鳥取県を取り上げ、逆に労働力率が低く、子育て世代に仕事から離れる率が最も高い県である神奈川県を取り上げてみましょう。
未婚女性と結婚した女性の職に就いている割合は、鳥取県では年齢階層ごとに見た差が17.75であるのに対し、神奈川県では31.3%に達していました。ちなみに、未婚女性の労働力率は両県で大きな差はありませんでした。(図5)

Figure5

そして、重要な点は、それぞれの県の合計特殊出生率は、1.6 vs 1.31と大きな差がありました。
「仕事を続けやすい環境=子どもを産み育ててゆきやすい環境」
という事がはっきりと見て取れるデータといえるでしょう。

腎臓の機能が悪くなると精子力は落ちますか?

精子が作られることも、全身の代謝活動の一環でありますので、腎臓の機能が悪くなれば、精液検査の結果も悪くなるのだろう事は、想像に難くないことです。
しかし、意外なことに、慢性腎臓病の重症度(極軽症のものから人工血液透析が必要な段階まであります)と精液検査の関連を調べた研究はほとんど有りません。
これに関して、スエーデンから、慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)の程度と「精子力」の関係を調査した論文が発表されています。(Lehtihet M, et al. Andrologia 2015; 47: 1103-1108)
慢性腎臓病の重症度は、2002年のNational Kidney Foundationの分類に従って判定しています。(表1)

Table1

これによれば、精液量・正常形態精子率・頭部形態異常精子率・頸部形態異常精子率の4項目以外の、全ての精液検査のパラメータと、副性器(精嚢や前立腺)の機能は、CKDのステージが進む程(腎臓の機能が悪くなるほど)悪くなる事が判りました。(表2)

Table2

やはり、腎機能も「精子力」に影響するのですね。
この原因を考えますと、腎機能低下の主な原因が糖尿病でありますので、高血糖による血管障害(血流障害)・酸化ストレスの増加(精子膜の脂質の障害やDNA損傷)・内分泌環境の変化(高プロラクチン血症・血中テストステロン濃度の低下)などが挙げられます。
それでは、腎機能が回復した場合はどうなるのでしょう。
腎移植を受けた場合の、精子力の変化についいては、次回説明する事にしましょう。

アルコールと妊娠に関する最新文献 2017

2017.08.20 | 不妊症全般, 新知識

これまでにも、アルコールと妊娠に関係がある・関係がないなど様々な報告があります。今回は、同一国内で行われた2つの最新の論文を見てみましょう。
デンマークで行われた、インターネットを利用した、前向き研究があります。2007年6月から2016年1月までに9497人の女性が登録し、最終的に6120人のデータが解析対象になりました。
参加者は、男性パートナーとの関係が良好で、明らかな不妊原因や不妊治療歴がないことが条件とされました。
まず、身長体重などの基礎的身体情報・教育水準・収入・喫煙・性周期・週間のセックスの回数・タイミング法の使用の有無・妊娠歴を登録し、子どもを作ろうとし始めてから妊娠するまで(12ヶ月以内)ないしは12ヶ月間は、2ヶ月毎に、その前月のアルコール摂取についてレポートをインターネット経由で送りました。・・・これはかなりの困難を伴う研究です。
アルコール摂取量は以下のように定義されました。
1杯:ビール1瓶(330ml)、グラス一杯の赤または白ワイン(120ml)、デザートワイン(50ml)、スピリット類(20ml)
この結果、自然妊娠にとっては、アルコールを飲まない~中等度(1週間に13杯まで)は、妊娠率に大きな影響はないことが判りました。
また、飲んだアルコールの種類によっての、差はないこともわかりました。週間14杯異常のヘビードリンカーでは、相対妊娠率が低下するのですが、特に非経産婦・タイミング法を行っている女性で傾向が顕著でした。(表1)

Table1

全体の相対妊娠率をグラフ化すると(アルコールを飲まない人を1とする)と図1の様になり、信頼区間の幅は広いものの、1週間のアルコール摂取が10杯程度から、妊娠率が低下すると考えられます.

Table2

結論としては、多数の女性が参加した前向き研究では、10杯程度と超えるアルコール摂取は、自然妊娠には悪影響があるという事です。
しかしながら、この研究からは、なぜ妊娠率が下がるのかは不明です。生活習慣に関係した事柄が、いかにして妊孕性に影響を与えるかを解明するのは、なかなか難しいことだと言えます。

2017年7月に、同じデンマークから、男性または女性のアルコール摂取が、体外受精の妊娠率に与える影響について、後ろ向きの調査を行った報告が出されました。Vittrup I, et al.Reprod Biomed Online. 2017; 35: 152-160
これによれば、体外受精を受けた12981人の女性が29834周期の体外受精を受け、アルコールを飲まない人で22.4%、アルコールを1週間に7杯以上飲む人では20.4%で子どもが生まれました。
また、男性の場合はアルコールを飲まない人のパートナーは22.6%で子どもが生まれ、1週間に14杯以上飲む人でも20.2%でした。この両者には差がありませんでした。
つまり、不妊治療としての、体外受精をしているカップルにとって、アルコールを飲むことは、必ずしもマイナスに働いていないという結果でした。
アルコールはまさに「百薬の長」と言えます、しかし「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」です。適度にすることが大切でしょう。

「1回のセックスで、妊娠する?」というのは、どのくらいの割合であることなのでしょうか?

2017.08.19 | 不妊症全般, 新知識

WHOの定義では、1年以上避妊をしないセックスを続けていても、妊娠に至らない場合を不妊症としています。すなわち、健常なご夫婦であれば、12周期(月経周期:約1か月が1周期)でほとんどが妊娠すると考えられています。
実際には、どのようなデータがあるのでしょうか?
ドイツで行われた、大規模な前向き研究結果が2003年に公表されています。
男性パートナー・女性パートナーのいずれにも、不妊原因となるものがないカップルで、自然妊娠で子供を授かるために、セックスをした場合に、妊娠するためにどのくらいかかるのかを調べました。
346人のカップルで、自然妊娠を目的として、基礎体温・子宮頚管粘液の自己チェックで、排卵日を予測して、セックスするいわゆるタイミング治療を行い、妊娠しない場合は最高21周期まで、経過を観察しました。
この結果、最終的に304人が妊娠しました。
累積の妊娠率を、周期ごとにグラフにすると 図1のようになりました。

Figure1

この中で、最終的に21周期以内に妊娠した304人についての累積妊娠率は( )で示してあります。
1周期で38%、3周期で68%、6周期で81%、12周期(約1年)で92%のカップルで妊娠しました。
自然妊娠を目指したカップルの約40%が、タイミング法開始した直後(1周期目)に妊娠するというのは、かなり衝撃的です。
さらに、女性パートナーの年齢と累積妊娠率の関係をみると、35歳を超えると自然妊娠を試みた各周期で、35歳以下よりも妊娠率が低い事がわかりました(図2)。

Figure2

健康なご夫婦でも、35歳問題は大問題です。

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