中学生以下では、がん治療前に精子凍結保存は出来ないのでしょうか?

2016.03.07 | 新知識, 未分類

精通現象(夢精:眠っている間に性的な夢を見て射精してしまう現象や、マスターベーションの経験)が無いために、がん治療前の精子凍結保存は出来るのかどうかという質問をたびたび受けます。
答えは、YESです。
思春期が来る途中であれば、精巣(睾丸)内では射精はまだ無くても精子形成が始まっていることがあるのです。
ですから、あきらめないでまず相談です。
最近。こんな患者さんがおられました。
14歳 男子(A君)
急性骨髄性白血病に対して化学療法受け、一時的は治癒判定を受けるも、再発したためさらに強い抗がん剤治療の予定が示され、同時に同種造血細胞移植(骨髄移植や臍帯血移植)を行うため、全身放射線照射予定され、治療後の無精子症の確立が高いことが判ったため、紹介受診されました。
しかし、A君は今までマスターベーションをしたこともないし、夢精も経験していないとの事でした。
お父様を含めて(このときは父親の役割は大切です)、精子凍結保存法について話し合いました。
1.マスターベーション教育をする
2.精巣精子採取(TESE)を試みる
2つのオプションを示した結果、TESEを選択されました。
そこで、麻酔下の援助の元に緊急TESE(microdissection TESE; MD-TESE, micro TESE)を行い、顕微授精10回分ほどの精巣精子を凍結保存しました。普通のTESEでは精子回収が出来なかったためMD-TESEに切り替わりました。(子供のトラウマを最小限にするために全身麻酔が望ましいです)
その結果、精巣精子を回収することに成功しました。
元々の病気(急性骨髄性白血病)の治療が優先されるのは当然ですが、治癒確立が極めて高いので、出来るだけその後の事も患者さん本人と両親を交えて話し合う必要があります。このような機会(場所)を獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンターでは提供できていると思います。
大切なことは、まず専門家への相談です。
獨協 リプロで検索してください。
獨協医科大学越谷病院・リプロダクションセンターのサイト

38回日本造血細胞移植学会総会の特別企画で講演します

名古屋国際会議場で開催されている、38回日本造血細胞移植学会総会(会長:宮村耕一先生 名古屋第一赤十字病院 副院長。血液内科部長)の特別企画 1
「造血細胞移植における妊孕性の検討」というプログラムののなかで、「移植前後の男性不妊に対する対応」について講演します。
男性がん患者の妊孕性の問題を、性機能障害・造精機能障害の2つの局面から解説します。さらに、獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンターでの、精子凍結保存プログラムの実際や、今回行った血液がん患者さんの精子凍結保存の実態調査についても報告します。
造血細胞移植の必要なぐらい強力な、化学療法や放射線療法をおこなうがん患者さんの治療を担当している治療医の方々と、生殖医療担当医をつなぐ有効なプラットホーム造りについても、獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンターでの取り組みをお話しします。
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がん患者さんの生殖に関して-3

2016.03.03 | 新知識

AYA世代の男性がん患者さんの妊孕性温存(次世代を作る能力を残しておく)ための、第一選択は精子凍結保存ですが、実態はどうなっているのでしょうか?
国内には、大規模な研究はありませんので、外国のデータを示しましょう。

Sperm cryopreservation in adolescents and young adults with cancer: results of the French national sperm banking network (CECOS). Fertil. Steril 103: 478-486, 2015

フランスで行われた、AYA世代の男子の精子保存の実態に関する報告です。
今回の研究組織であるCECOSに参加した23カ所の精子凍結保存施設からの4345例の解析結果です。
対象となった疾患は、前回のブログに書きましたように、悪性リンパ腫40%、白血病15%、胚細胞腫瘍 24%、悪性骨腫瘍10% 軟部組織肉腫3%、その他の癌2%、中枢神経系腫瘍2%、その他4%となっています。
これらは、原則として全て、治療開始前に精子凍結保存の説明がなされ、実際に凍結保存されています。
対象となった疾患の変遷は、Fig1 1Aに示されているように、はじめは悪性リンパ腫がほとんどですが、次第に胚細胞腫瘍や白血病が増加してきています。

Figure1
Fertil. Steril 103: 478-486, 2015を改変

精子凍結保存の年齢分布では(Fig. 1 B)興味深いことに、14歳以下の男子で精子凍結保存がなされたのは1984年からなので、そう古いことではないのです。
精子採取方法は、マスターベーションが基本ですので、最も若いマスターベーションでの精子回収・精子凍結保存の出来た男子の年齢は12歳であったと報告しています。
さらに、興味深いのは血液がん患者さん(悪性リンパ腫+白血病)と胚細胞腫瘍を分けて考えた場合、年代別にそれぞれのがん患者さんの中でどのくらいの割合で精子凍結されたかを示している点です。(Fig.2 )

Figure.2

なんと、2005年時点では、15歳以上であれば血液がん・胚細胞腫瘍の90%以上で精子凍結保存がなされています。
10歳-14歳の男子でも、1984年以降徐々に精子凍結保存が増加していることが判ります。

そして、極めつけは採取出来た精液の検査結果です。(Table-1)
意外と良好であることが判ります。
我々の、リプロダクションセンターでのデータはもう少し症例数が集まれば、報告しましょう。

Fig.1 疾患別・年齢別 精子凍結保存時の精液所見
Tabel.1
Fertil. Steril 103: 478-486, 2015を改変

がん患者さんの生殖について-2

2016.03.02 | 新知識

AYA世代の男性がん患者さんの精子保存はどうなっているのでしょうか?

AYAとは、adolescent and young adultsの略で、思春期から20歳以下の若年の世代を代表するネーミングです。
以前のブログで年齢別のがん患者数を示しましたが、この中でAYA世代の男性がん患者さんの生殖について、考えてみましょう。

http://maleinfertility.jp/blog/?p=1711

男性では、血液がん・中枢神経系のがんが多いことが示されていましたが、これらの患者さんは、30年前であれば命を救うことが困難な事が多かったのですが、最近ではかなり高い確率(おしなべて言えば80%以上)で治癒することが出来る様になりました。
具体的には、Fig. 1に示すように、年代を経るに従って、治癒する割合が増加してきているのです。

Fig. 1 2016.3.2

すると当然、これらの世代が子供を欲しいと考えた時に、生殖の問題がクローズアップされてきます。
男性の場合であれば、治療開始前の精子保存が第一選択になります。
この事に関する、大規模研究については、11歳から20歳の男性がん患者さんに関する、フランスのデータを次回お知らせいたします。
対象となったのは4345例のAYA世代の男性がん患者さんです。その、がんの種類を示しておきましょう(Fig. 2)。
Fig. 2 2016.3.2

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