情報サイト「zakzak」に掲載されました。
【日本の精子力は危機】(上)自転車通勤はEDのリスク高まる!?
2013.08.28
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勃起力だけ気にしていてはいけない、精子力こそ男にとって大切なもの―というわけで、
精子力のために男が心がけるべきポイントを、岡田先生から特別に伝授してもらった。
まさに、ホンマでっか? が目白押しの下半身問題に迫る。(記事より)
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(zakzak画面)
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【日本の精子力は危機】(上)自転車通勤はEDのリスク高まる!?
2013.08.28
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勃起力だけ気にしていてはいけない、精子力こそ男にとって大切なもの―というわけで、
精子力のために男が心がけるべきポイントを、岡田先生から特別に伝授してもらった。
まさに、ホンマでっか? が目白押しの下半身問題に迫る。(記事より)
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こんにちは。事務局です。
先日、Dr.岡田と
ジャーナリスト・河合 蘭さんの対談を行いました。
河合さんの著書『卵子老化の真実』(文春新書)は、大きな話題になっています。
精子の老化について研究をすすめるDr.岡田との刺激的な対談の様子は、当サイトにて公開予定です。
どうぞ、お楽しみに!
「精子の老化」と「卵子の老化」に関する、必読の二大書!
『男を維持する「精子力」』好評発売中!
男性不妊外来に通院中の患者さんに尋ねると、実に様々な栄養補助食品(サプリメント)を服用しています。この中でも、ダントツに多いのが「マカ」であります。
マカはどんなサプリメントなのでしょう?
Lepidium meyeniiという学術名で呼ばれる植物の胚軸を乾かしたもので、古くからアンデスの高地に、滋養強壮剤として原住民に用いられてきた薬草です。乾燥した堅い胚軸を、粉末にしたりお湯で煮出したりしたエキスとして、用いられてきました。
南米各地をスペイン人が占領するに伴って、この植物の存在がヨーロッパに伝えられ、薬用に用いられるようになったのです。
さて、どんなところに生息するのでしょう。実は、ペルーのアンデスの中央部のJunin州のCarhuamayo地方と呼ばれる、標高4100mの高地に自生しているものなのです。(画像をクリックして拡大・Fig.1)
Fig. 1 2013.8.27
この、厳しい環境に育つマカは大きく分けて、black, yellow, white macaの3種類があります。
そして、この中で滋養強壮に有用なのは、black maca(黒マカ)である事が知られています。
(画像をクリックして拡大・Fig. 2)
Fig. 2 2013.8.27
ペルーからのレビュー論文(Gonzales GF Ethnobiology and Ethnopharmacology of Lepidium meyenii (Maca), a Plant from the Peruvian Highlands. Evidence-based Complementalry and Alternative Medicine 2012:193496. doi: 10.1155/2012/193496.)
実際に、標高4100mのCarhaumayoの住人を調査した結果、健康状態がマカの抽出物(エキス)を飲んでいる人が飲んでいない人よりも、40歳から70歳代の全ての年代で良好であった事が報告されています。(画像をクリックして拡大・Fig. 3)
Fig.3 2013.8.27
いかにも精力を上げるのに役立ち、精子力も上げそうな気がするのですが、これまでに、動物実験ではどのような効果が照明されているのでしょうか?
Table 1に示しましたようにTable 1 2013.8.27、ラットやマウスやモルモットといった小動物では、精子数の増加や性行動の活発化などが報告されています。ウシのような大動物では、精子数と精子の質の向上が報告されています。さて、肝心なヒトの場合はどうでしょうか?
ヒトにおいては、ペルーでは古来から不妊の治療薬として用いられてきたようですが、現在マカが精液検査結果に影響を与えたとする論文は、ペルーからの1本しかありません。(Gonzales GF, et al. Improved sperm count after administration of Lepidium meyenii (maca) in adult men. Asian J of Andrology.3: 301-304, 2001)
しかも、たった9人のもともと精液検査で異常が無い人にmacaを4ヶ月服用してもらい、服用前の精液検査と比較したというものです。その結果は、精液量・総精子数・運動精子濃度・精子運動率が改善したと述べています。(画像をクリックして拡大・Table 2)
Table 2 2013.8.27
しかし、その解析方法・サンプル数から見て到底、科学的根拠になるものではありません。
もう一つ大事なことは、これまでのマカの動物実験の論文にせよ、ヒトに対する効果を検討した論文にせよ、いずれもペルーの4000m級の高地で産生されたマカを用いているのです。
現在、日本国内で流通しているマカは、ほとんど低地栽培のマカであり、しかも多くがblack maca(黒マカ)ではありません。
すなわち、現時点ではマカが精液検査を改善したり、精子力を改善するという事を支持する根拠はありません。もう少し、慎重な解析結果がでてから、お使いになった方が賢明でしょう。
不妊症に治療中に精液検査を受けることは、治療方針を決める上でも重要な事ですので、多くの人が疑問をもたないことでしょう。頻回に精液検査が行なわれている例として、人工受精(AIH)中の患者さんカップルのことを例に取ってみましょう。
A夫さん(38歳)とB子さん(34歳)夫婦は、A夫さんの射精障害のために3年間の不妊期間を経て、不妊治療を行なっているクリニックを受診しました。そこでの、精液検査の結果では、精液量3ml、精子濃度4500万/ml、精子運動率75%、正常形態精子率25%(strict criteria)と異常を認めませんでした。射精障害の治療は行なわずに、まず一人目の子どもを授かりたいとして、人工受精を5回受けていました。この約8ヶ月の間に、精液検査の結果が段々悪くなったために、泌尿器科に紹介されました。(画像をクリックして拡大・Fig. 1, 2)
初めは、4500万/mlの精子濃度は100万/mlに、精子運動率は75%が10%に激減しています。
さてここで注意をする必要があります。5回目の人工受精の時のように、精液検査の結果がとても悪い場合は、顕微授精を勧められるのではないでしょうか?
A夫さんは、幸いなことに泌尿器科受診を勧められました。精巣の超音波検査を行なうと、なんと直径5mmの精巣がんが見つかったのです。(画像をクリックして拡大・Fig. 3)A夫さんは、早速手術で精巣がんのある精巣を摘出しました。病理結果は、セミノーマで初期のがんであったため、追加の治療は必要ありませんでした。手術以後に、精巣は1つになったにもかかわらず、精液検査の結果は改善して、7回目の人工受精で妊娠が成立し、無事に女児を授かりました。
精液検査の結果が不良な不妊症男性の場合、精液検査結果が正常な不妊症男性と比べて、精巣がんの頻度は1.6倍になると報告されています。(Jacobsen R, et al. Testicular cancer in men with abnormal semen characteristics: cohort study. BMJ 321: 789-792, 2000)
また、男性不妊の患者さんの精巣がん発生率は、子どものいる男性の20倍高いことが彷徨されています。(Raman JD, et al. Increased incidence of testicular cancer in men presenting with infertility and abnormal semen analysis. J Urol. 174: 1819-1822, 2005)
日本での精巣がんの頻度は、人口10万人あたり1-2人ですから、男性不妊患者さんの場合は、2500人から5000人に1人ということになります。しかし、この数字は、全男性人口での値ですので、生殖年齢(20-40)の男性に限って言えばさらに頻度は上昇し1000人から2000人に1人という数字になります。実際、我々の施設では、年間の男性不妊の新患数が1500人で、毎年1-2人の精巣がん患者が、発見されています。ほとんどの患者さんは早期がんで見つかるため、手術療法以外の追加治療がいりませんでした。
精液検査の結果が悪化した場合は、不妊治療をステップアップする前に、必ず泌尿器科専門医を受診しましょう。
男性不妊外来の診察では、精液検査が重要な検査になります。しかし、この値は、前回(2013年7月19日の精液検査の落とし穴Part 1.)にも書きましたように、精液の採取場所・時間・年齢・禁欲時間によっても大きな影響を受けます。
もう一つ大事な要素は、季節による差です。動物の場合は、繁殖シーズンがはっきりしていて、この時期以外は交尾回数も減りますし、妊娠は通常起こりません。ヒツジやヤギでは、繁殖シーズン以外では精巣(睾丸)の容積が小さくなりますし、下垂体から精子を作りなさいと命令するホルモンであるLH, FSHも50%低下する事が知られています。
さて、同じ事がヒトにも当てはまるのでしょうか?
まず、日本での出生率の季節変動を、見てみましょう。
①厚生労働省人口動態総覧からみた、月別出生数(画像をクリックして拡大・Fig.1)
7月8月9月と夏真っ盛りから、初秋にかけての出産数が多いことが判ります。
これを四季に分けてグラフにしてみると夏・秋が春・冬に対してずいぶん多いことが判ると思います。(画像をクリックして拡大・Fig.2)
ヒトは、他のほ乳類ほどは繁時期がはっきりしていません。この原因はどこにあるのでしょうか。出生の季節から見ると、性交して妊娠したのは、その前年の秋から初冬にかけてであることが判ります。
それでは、精液所見(精液量・精子運動率・精子運動速度・正常形態精子率・禁欲日数)に季節変動はあるのでしょうか?
これに関しては、最新のイスラエルからの論文がでました。Levigu E, et al. Seasonal variations of human sperm cells among 6455 semen samples: a plausible explanation of a seasonal birth pattern. Am J Obstet Gynecol 208:406. e1-e6. 2013です。
彼らは、解析に当たり4060サンプルの精子濃度2000万/ml以上の正常精子濃度検体と1495サンプルの400万~19990万/mlの乏精子症検体に分けました。
この結果、精液量や禁欲日数は季節変動しないのですが、精子濃度は冬から春に上昇し、総運動精子濃度は夏から秋にかけて上昇しました。ここで注意が必要なのは、自然妊娠に大きな影響を持っている高速運動精子は秋から冬にピークを迎えたという事です。さらに、自然妊娠に重要な正常形態精子率はやはり冬が高いということです。(Table 1)
総合的に見ると、「精子力」は春から夏に向かって低下し、秋から冬に上昇すると結論されています。正常精液所見の男性から生まれた子どもの数は、これを実証するように、このイスラエルの施設では、夏から秋にかけて上昇する事が判りました。(画像をクリックして拡大・Fig.3)
一方、乏精子症のサンプルでは、精液量・禁欲日数・高速運動精子率には季節変動は無く、総運動精子率は秋に高値と成りましたが、これは、自然妊娠に寄与することが少ない低速運動精子率が増加した事によるものでした。さらに、正常形態精子率は春と秋に高くなるなど、季節毎に精液所見の各パラメーターが連動して動く結果とは成りませんでした。(画像をクリックして拡大・Table 1)
そこで、著者らは精子濃度が2000万/ml以上の不妊カップルの場合は冬に、1990万/ml以下の不妊カップルの場合は、春と秋に子作りに励むことを奨励しています。
さて、いかがなものでしょうか?
と言いますのは、この研究の結論には問題点があります。①1年間の気温差が比較的小さいイスラエルでなされたこと、②季節による性交回数が考慮されていないこと、です。
より、四季の区別のはっきりした日本でのデータを作る必要があります。
次回は、季節による性交回数の変化について解説します。
こんにちは。
今日のブログは事務局から、書籍・サイト制作の裏話をお届けします。
ただいま、本サイトのコンテンツ「男性不妊百科」の公開に向けて、作業を進めています。
どんな内容にするか、どんな画像や図版を使うか・・・・・・などなど、
打ち合わせを重ねて、制作にあたっています。
公開まで、しばしお待ちくださいませ。
「ズバリ! 100問100答」は、随時更新。
Dr.岡田に質問がある、聞いてみたい、相談したい!
という方は、上記ページの右にあるフォームより、お申し込みください。
「精液検査をしたら、精子の数が標準より少ないと言われてしまった・・・・・」
「まだ病院には行っていないけど、心配なことがある」
「精液検査や不妊治療に戸惑いがある」 ・・・・・・などなど
お気軽にお寄せください。
いますぐできる、元気な精子を保つ生活。
「精子力を高める7カ条」も、ぜひ参考にしてください。
次回の更新をお楽しみに。
8月15日発売の読売新聞 夕刊 からだ面に「男を維持する『精子力』」が紹介されました。
ますます、「精子力」という言葉は、認知されつつあります。yomiuri 001
悪性腫瘍の患者さんの精子形成はどうなっているでしょうか?
「悪性腫瘍(がんや肉腫)そのものの治療のことで精一杯で、精子形成や妊孕性のことなんか考えられない。」と言う患者さんが多いでしょう。しかし、治療法の進歩で、完治する悪性腫瘍がどんどん増えてきています。とくに、生殖年齢で悪性腫瘍に罹った男性にとっては、自分の妊孕性(こどもを作る能力)について無関心ではいられません。
2つの疑問が浮かびます。
①治療開始前から精子形成は悪いのでしょうか?
②治療(抗がん剤や放射線照射)が精子形成に影響するのでしょうか?
まず①についてです。
悪性腫瘍の患者さんの精液検査をした論文を調べてみました(Chung K, et a. Sperm cryopreservation for male patients with cancer: an epidemiological analysis at the University of Pennsylvania. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 113 (suppl 1): S7-S11, 2004)。
すると、精巣がんでは治療開始前に28%の患者さんが乏精子症でした。男性不妊患者さんでは、精巣がんの患者さんの頻度が高いことが知られています。ホジキンリンパ腫では25%が、白血病では57%が、消化器がんでは33%の患者さんが、乏精子症ないしは無精子症でした。これは、一般の乏精子症や無精子症の頻度よりも数倍高いことから、悪性腫瘍そのものが精子形成に影響を与えていると考えられています。
しかし、どういうメカニズムで精子形成に影響を与えるかに関しては、残念ながら未だに定説はありません。
次に②についてです。
精巣は骨髄と同様に、活発に細胞分裂をして新しい細胞(精子)を作り出しています。抗がん剤や放射線照射は、細胞分裂を阻害することが知られていますので、精子形成が障害される事は周知の事実です。では、治療後に精子形成は回復するのでしょうか。
精巣がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がんの患者さんについてまとめたものがTable 1です。(Trottmann, et al. Semen quality in men with malignant diseases before and after therapy and the role of cryopreservation. Eur Urol 52: 355-367, 2007)(画像をクリックして拡大・Table 1)
Table-2013-0814
精巣がんの場合は、抗がん剤治療後にかなり精子形成は戻ってきます。しかし、精巣そのものに放射線を照射した場合は、3Gyの一回だけでも精子形成はグンと低下します。
ここで重要なことは、少ない量を分けて照射する(分割照射)方が、精子形成には重大な影響を及ぼすという事です。
リンパ腫の治療は多種類の抗がん剤の組み合わせで行ないますが、ホジキンリンパ腫に対する抗がん剤の方が非ホジキンリンパ腫に対する抗がん剤よりも、精子形成に悪影響があります。
さらに重要なことは、リンパ腫や白血病の患者さんの治療で用いられる、骨髄移植ですが、cyclophospamideのみの使用であれば精子形成には大きな影響はないのですが、全身放射線照射をした場合は、精子形成に甚大な障害があるということです。
初期の膀胱がんでは、内視鏡手術の後に膀胱内に再発を防ぐために、MMCやBCGを注入するのですが、BCG注入により乏精子症になると言う報告があります。
前立腺がんの放射線治療のなかで最近急速に広まっているのが、前立腺組織内に放射線を放出する線源を埋め込む、密封小線源治療です。この治療法は精子形成に影響ないようですが、体外から前立腺部に放射線照射をする方法では、精子形成は低下すると報告されています。
骨肉腫の抗がん剤治療は、強い精子形成障害があり、治療終了後長期間精液所見の悪化があります。同じ肉腫でもEwing肉腫などの軟部組織肉腫に対する抗がん剤治療の場合は、治療後に高い割合で精子形成は正常化します。
放射性同位元素131Iを用いた甲状腺がん治療は、一旦は全身を131Iが循環しますが、精子形成には影響はありません。
こうしてみると、治療開始前に精子が採取出来るのであれば、精子の凍結保存をすることが大切である事が判りますよね。
医療従事者の場合は生殖年齢の患者さんであれば、精子凍結保存の話を必ずする必要があります。患者さんの場合は、悪性腫瘍の治療のことで精一杯でしょうが、主治医と相談して精子凍結保存を、積極的に行なって欲しいと切に願うものです