がんの患者さんでは、精子力が下がりますか?

日本人の2人に1人(半数)が一生のうちに何らかのがんに罹ると推計されています。
がんは現在ではとても身近な存在です。その中でも、血液がん(白血病・悪性リンパ腫)・精巣がん・大腸がんなど青年期から壮年期の男性がん患者さんが増えています。この年台は子どもを授かろうとする、生殖年齢に一致しています。
このような患者さんの精子力はどうなっているのでしょうか?
もちろん、これらのがん患者さんで、病状が思わしくなく命の危険がある状態での精液検査を行ったデータはありません。がん患者さんで、治療開始前や治療中に精子凍結保存を希望してこられた場合のデータは、少数例ずつ報告されています。
この中で、単一施設で最も多い患者さんについての報告をご紹介します。
409人のがん患者さんの、精子凍結保存時の精液検査のデータを比較したところ、精巣がんのみが、他のがん患者に比較して精子濃度・精子運動率・総運動精子数が低い結果でした。
すなわち、精巣がん患者さんでは精子力が低下した患者さんが多いことが判りました(表:クリニックすると拡大表示されます)。

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この原因は、
① 片方の精巣がんから反対側の精巣に向かって、精子形成の邪魔をするような因子が出ている。
② もともと、精巣がんは精子形成障害と共通している遺伝子異常を持っている。
という可能性が、考えられます。
現在、②の可能性が高いという証拠が集まりつつあります。

男児の妊孕性温存に関する情報です

精子形成の始まっていない男児が、悪性腫瘍に罹り、手術・抗がん剤治療・放射線治療を受けた場合の、将来の子どもを授かる見込みはどうなっているのでしょう?

精子形成がないのですから、もちろん治療開始前に精子凍結保存をすることは出来ません。
これらの患児が、治療の結果治癒した場合、子どもを授かる事がどのくらい出来ているのかを調べた研究は、国内にはありません。
St Jude Children’s Research Hospital(米国テネシー州メンフィス)からの報告によれば、診断時年齢が若年であるほど、将来に児を持てる可能性は低くなり、治療法別では手術・化学療法・放射線治療それぞれの単独療法よりも、化学療法と放射線治療の併用で、妊孕性が低下する事が示されています(表)。
国内でも、同様の研究・調査が行われると良いでしょうね。
次回は、精子形成前の男児の妊孕性温存の最前線について、解説します。

表 2017.7.7
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がん専門相談員向け妊孕性相談研修会が開催されました

一生の内に2人に1人はがんに罹る時代です。
誰にとっても身近な病気になっている「がん」です。
最近では、かなり多くの患者さんが治る(再発無く治癒する)病気でもあります。
患者さんの、治療後の生活の質(QOL: quality of life)を左右する様々な因子が有ることが知られています。例えば、仕事の問題や経済的な問題・精神心理的問題・運動制限や体力の問題など様々な事が、がんを克服した人々に負の影響を及ぼします。この中で、妊孕性(にんようせい:次世代の子どもを作る能力)の問題は深刻なものがあります。

本日(12月4日)、国立がんセンターで、がん患者さんたちの幅広い悩みの相談相手であるがん専門相談員さんたちを対象とした、がん患者さんの妊孕性温存に関するセミナーが開催されました。私も、1つのセクションの講義を担当いたしました。今後、がん診療拠点病院を中心に、急速相談の輪が広がって行くことが期待されます。


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朝日新聞に取材記事が掲載されました

■朝日新聞・10月21日朝刊「がんと暮らし」

朝日新聞の10月21日の朝刊のシリーズ「がんと暮らし」欄に取材記事が掲載されました。

以下、リードから
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がんにかかり、抗がん剤や放射線を使う治療が始まると、子どもをつくる機能に影響が出ることがある。「将来、子どもが欲しい」と願う患者の希望に沿い、生殖機能を保つために、がんの診療科と産婦人科などとの連携が進みつつある。事前に十分な情報を得て、患者自身や家族がよく考えて納得してから治療を始めることが大切だ。
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*事務局

38回日本造血細胞移植学会総会の特別企画で講演します

名古屋国際会議場で開催されている、38回日本造血細胞移植学会総会(会長:宮村耕一先生 名古屋第一赤十字病院 副院長。血液内科部長)の特別企画 1
「造血細胞移植における妊孕性の検討」というプログラムののなかで、「移植前後の男性不妊に対する対応」について講演します。
男性がん患者の妊孕性の問題を、性機能障害・造精機能障害の2つの局面から解説します。さらに、獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンターでの、精子凍結保存プログラムの実際や、今回行った血液がん患者さんの精子凍結保存の実態調査についても報告します。
造血細胞移植の必要なぐらい強力な、化学療法や放射線療法をおこなうがん患者さんの治療を担当している治療医の方々と、生殖医療担当医をつなぐ有効なプラットホーム造りについても、獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンターでの取り組みをお話しします。
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がん患者さんの生殖に関して-1

がん患者さんの生殖を考える上で大切な事は、どのようながんが、どのような年齢に多く発生するかを知ることです。そして、男性と女性の間にその傾向に差があることを意識することです。
今回は、日本人の生殖年歴(仮に44歳以下とします)の人がかかる可能性のあるがんには、どのような種類があるのでしょうか?
日本における、がん拠点病院(たくさんのがん患者さんを診療している日本を代表する機関)の集計が公開されています。
http://www.gunma-cc.jp/sarukihan/seizonritu/index.html

この報告を元に男性・女性を分けたとき年齢別にどのようながんが発生する割合が高いかが検討されました。
Fig.1 Fig.2に男女の傾向をしまします。

Fig.1

Fig. 2

男性・女性ともに20歳以下では血液がんの割合が多く、この後に男性では消化器がんの割合が増加し、女性では乳房と女性生殖器のがんが増加することが判ります。
これらの、がんの治癒率に関しては、次回解説します。

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