~体外受精するときに、精子がなかったらどうしよう~

精子濃度の極端に低い男性からのお悩み相談
~体外受精するときに、精子がなかったらどうしよう~
不妊症の治療はカップルで行う事が基本です。
ご主人の精液検査を3回行いましたが、2回はごく僅かの運動精子が存在しましたが、1回は遠心分離して何度も見直しましたが、精子を見つけることが出来ない無精子の状態でした。
このように、時には僅かながら射精液に精子が存在するが、時には精子がいないこともある場合を、cryptozoosperimia (隠れ精子症、クリプト精子症)と言っています。
このような場合に、顕微授精(ICSI)が選択されるわけですが、顕微授精の当日に射精液を調べて精子が存在しない場合は、受精に用いる精子がないために、治療がキャンセルされてしまいます。通常、採卵に備えてホルンによる刺激療法を受けていますので、女性(奥様)の肉体的・精神的・経済的負担は大きいものがあります。
そこで、「顕微授精当日に用いるべき精子がない」という事態を避けるために、あらかじめ精子を凍結保存しておくことが勧められています。(精子のバックアップ凍結保存と呼ばれています)。
しかし、このバックアップ精子凍結保存は万能ではないのです!
「確かに、凍結保存する時には精子は存在したのですが、これを融解して精子を探し出そうとしても、見つからない」と言う事態が起こりうるのです。
極少数の精子を凍結保存している場合に、実際経験される事なのです。
理由は、以下の様なことが考えられます。
① そもそも、凍結保存の時に、うまく精子が回収出来ずに1つの精子も凍結保存されていない。
② 凍結保存容器の壁に付着してしまい、回収出来ない。
③ 融解過程で、精子がこわれてしまう。
同じように、極少ない精子を凍結保存しなければならない場合が、非閉塞性無精子症で顕微鏡手術により精巣精子を採取した(MD-TESE, micro TESE)場合に、極少数の精子しか回収出来ないため、これを凍結保存して顕微授精に用いるとなると、上述したのと同じ事態が起こる可能があります。
バックアップ精子凍結保存が万能でないとは?
どの施設でも経験していることですが、実際にどのくらいの頻度で、「顕微授精の時にバックアップ凍結保存されているはずの精子が回収出来ない」という事態が起こっておるのかを調べた研究はこれまでありませんでした。
最新の研究成果が、米国の生殖医学会雑誌Fertility & Sterilityに掲載されました。
(Kathrins M, et al. Fertil Steril. 2017; 107: 1300-1304)
この研究で、射精液の精子にしろ、精巣精子にしろ、極少ない精子数をバックアップ凍結保存して顕微授精時に融解して精子回収を試みた、結果はどうだったのでしょうか?
臨床上、何となく数%ぐらい有るかな?と思っているように、クリプト精子症や総精子数が10万以下の場合、射精液中の精子を凍結保存して、これを融解して精子を探して、精子が見つからないケースが、クリプト精子症で8.5%・総精子数10万以下の場合に2.8%でおこります(図1)。

Table1

それでは、精子の由来によって差があるのでしょうか?
精子を精液から採取した時には、クリプト精子症や総精子数が10万以下の場合は7.1%で凍結保存―融解後に精子を見つけることが出来ませんでした。非閉塞性無精子症でTESEを行ない精巣から精子を回収し、凍結保存―融解した時には、クリプト精子症や総精子数が10万以下の場合は、5.8%で精子を見つけることが出来ませんでした(図2)。

Table2

やはり、数%で凍結保存後に融解した時に、精子が見つからない最悪の事態が起こるのです。
そこで、このような、事態を避けるために、非常に少ない精子(例えば1-9精子)でも凍結保存―融解後に精子が確実に回収出来る方法を、獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンターでは、確立しています。

この内容は、論文掲載されましたら、再度報告いたしましょう。

腎臓の機能が悪くなると精子力は落ちますか?

精子が作られることも、全身の代謝活動の一環でありますので、腎臓の機能が悪くなれば、精液検査の結果も悪くなるのだろう事は、想像に難くないことです。
しかし、意外なことに、慢性腎臓病の重症度(極軽症のものから人工血液透析が必要な段階まであります)と精液検査の関連を調べた研究はほとんど有りません。
これに関して、スエーデンから、慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)の程度と「精子力」の関係を調査した論文が発表されています。(Lehtihet M, et al. Andrologia 2015; 47: 1103-1108)
慢性腎臓病の重症度は、2002年のNational Kidney Foundationの分類に従って判定しています。(表1)

Table1

これによれば、精液量・正常形態精子率・頭部形態異常精子率・頸部形態異常精子率の4項目以外の、全ての精液検査のパラメータと、副性器(精嚢や前立腺)の機能は、CKDのステージが進む程(腎臓の機能が悪くなるほど)悪くなる事が判りました。(表2)

Table2

やはり、腎機能も「精子力」に影響するのですね。
この原因を考えますと、腎機能低下の主な原因が糖尿病でありますので、高血糖による血管障害(血流障害)・酸化ストレスの増加(精子膜の脂質の障害やDNA損傷)・内分泌環境の変化(高プロラクチン血症・血中テストステロン濃度の低下)などが挙げられます。
それでは、腎機能が回復した場合はどうなるのでしょう。
腎移植を受けた場合の、精子力の変化についいては、次回説明する事にしましょう。

騒音は男性不妊に関係しますか?

環境騒音は、動物実験モデルでは繁殖力に影響すると結論されています。
ヒトの場合はどうでしょうか?
騒音により、ストレスが生じ、このために視床下部-下垂体-精巣系の内分泌調整機能が障害宇され、精子形成に悪影響が出るのでは?と推定されています。
この疑問に答えるデータが韓国から出てきました。(Min KB, et al. Environmental Pollution. 2017; 226: 118-124)
韓国の環境省の騒音測定結果と男性不妊の関係を調査しています。
生殖年齢を20歳から59歳と定義して、2002年の全体対象人口(男性人口)の2.2%に当たる1025340人を前向きに調査しました。
先天奇形・感染症・尿路性器の外傷・精巣がんを除外しています。
2013年まで経過観察して、男性不妊との関係を調べました。
昼間の騒音:60デシベル(dB)以下とそれ以上<ヨーロッパの環境基準に準拠>
夜間の騒音:55dB以下とそれ以上<心筋梗塞に影響があるとされる閾値>
男性不妊の定義はICD-10 code N46に従っています。用いた精液検査の基準値はなぜかWHO1999版(精子濃度の基準値が2000万/ml以上)でした。
この結果、昼間騒音が60dB以上、夜間騒音が55dB以上ではそれ以下と比較して、男性不妊の割合が高い結果でした。(図1)

Figure1

さらに、騒音の程度を4段階に分けた場解析でも、昼間も夜間も騒音が基準を超すと、どの程度の騒音でも男性不妊の割合は増加していました。(表1)

Table1

しかし、騒音の増加と男性不妊率は、相関関係は見いだせませんでした。
やはり、静かな環境は大切なようです。
日本の環境基準を示しておきましょう。この研究の基準値より、もう少し静かな環境が勧められているようです。
(表2)

Table2

男性不妊に対する関心度は?

不妊症に悩むご夫婦が増えているとの報道が相次いでいます。
原因は、環境汚染・メタボ・遺伝子異常・婚姻-挙児に対する意識の変化・子どもを産み育てにくい社会構造 などなど様々に取りざたされています。
この中で、男性不妊に対する関心はどうでしょうか?
過去5年間の検索数の変化を調べてグラフにしました。図1

figure1

最も検索の多かった2012年9月(この前にNHKが不妊症の特集をした)を100とすると、2017年8月は97と過去最高を更新する勢いです。
このように、男性不妊に対して関心が高まっている時期ですので、正しいデータ・わかりやすい解説を心がけたいと思います。
ネットにあふれる情報を整理してお届けする、サイト(http://maleinfertility.jp/http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-k/repro/index.html)の運営に努力します。

がんの患者さんでは、精子力が下がりますか?

日本人の2人に1人(半数)が一生のうちに何らかのがんに罹ると推計されています。
がんは現在ではとても身近な存在です。その中でも、血液がん(白血病・悪性リンパ腫)・精巣がん・大腸がんなど青年期から壮年期の男性がん患者さんが増えています。この年台は子どもを授かろうとする、生殖年齢に一致しています。
このような患者さんの精子力はどうなっているのでしょうか?
もちろん、これらのがん患者さんで、病状が思わしくなく命の危険がある状態での精液検査を行ったデータはありません。がん患者さんで、治療開始前や治療中に精子凍結保存を希望してこられた場合のデータは、少数例ずつ報告されています。
この中で、単一施設で最も多い患者さんについての報告をご紹介します。
409人のがん患者さんの、精子凍結保存時の精液検査のデータを比較したところ、精巣がんのみが、他のがん患者に比較して精子濃度・精子運動率・総運動精子数が低い結果でした。
すなわち、精巣がん患者さんでは精子力が低下した患者さんが多いことが判りました(表:クリニックすると拡大表示されます)。

Table1

この原因は、
① 片方の精巣がんから反対側の精巣に向かって、精子形成の邪魔をするような因子が出ている。
② もともと、精巣がんは精子形成障害と共通している遺伝子異常を持っている。
という可能性が、考えられます。
現在、②の可能性が高いという証拠が集まりつつあります。

サウナ好きなんですが、「精子力」に悪いですか?

精子形成は温度に敏感である事は良く知られています。
度々質問される事ですが、日本人はなぜかサウナ好きが増えているようです(図1 日本サウナ総研調べ)。
サウナと精子力 2017.8.115図1
妊活中の男性の中には、サウナを控えるか否かを迷っている方も多いと思います。
サウナの精子力に対する効用ならず、作用を調べた報告を紹介します。
イタリアからの報告です。
10人の精液検査では基準値以内のボランティアに、3ヶ月間80-90℃のサウナに、15分間2回/週入ってもらう習慣を3ヶ月間続けてもらいました。そして、サウナを使用する前・サウナ使用を3ヶ月間続けた時点・サウナ使用を中止してから3ヶ月時点・サウナ使用を中止してから6ヶ月に時点での、精液検査を行い比較しました。さらに、精子DNAの状態や精子のエネルギーを生み出すミトコンドリアの状態や、精子のクロマチンの状態・精子のアポトシースの状態を調査しました。(Garolla A, et al. Hum Reprod. 2013; 28: 877-885)
その結果、サウナに入ると陰嚢皮膚温は、入用前の34.5±0.6℃から37.5±0.4℃に有意に高くなりました。
精子力に対してはどうだったでしょう? 精子濃度、総精子数、前進運動精子率は3ヶ月間のサウナ使用で低下しました。
その他の精液量・正常形態精子率・生存精子率は変化がありませんでした。
サウナ使用をやめて3ヶ月すると、低下した精子濃度と前進運動精子率は元の状態に回復し、6ヶ月サウナ使用を中止すると、全ての測定値が元に戻りました。
すなわち、サウナを週2回使用することで3ヶ月目には精子力は低下しますが、その影響はサウナ使用を6ヶ月以上やめるとなくなるということです。(図2)
サウナと精子力 2017.8.115図2 訂正版
この原因として、ミトコンドリア機能が低下したり、精子のDNAの格納状態が変化したり、クロマチンの濃縮率が低下することが、関係している事を挙げています。
この結果からは、妊活中はサウナはやめた方が良さそうです。

男性不妊患者さんの健康状態について

不妊症の患者さんを診察する時に、過去・現在の病気について尋ねるために問診票を用いています。お子さんを授かりたい人たちですから、もちろんご自身は健康体である方が多きのですが、最近はそうでもない人が多いように感じられます。
例えば、糖尿病を持っていたり、腎臓の機能が低下して血液透析の一歩手前であったり、最近がんが見つかりこれを治療した直後である場合などがあります。
実際に、男性不妊患者さんの健康状態はどうなのでしょうか?
公衆衛生学的に健康状態を捉える指標として、併存病の有無を用いたチャールソン併存病指標(Charlson Comorbidity Index: CCI)がよく使われています。
これは、併存病をその生命予後に与える影響の大きさによって重み付けし、その合計点数で併存病の程度を数字で表すものです。
オリジナルは、1987年にCharlsonらによって開発され、世界中で用いられています。数年おきに改変されたものが公表されていますが、オリジナルのものを用いた研究が最も多く発表されています。

Table1

判定応報は、例えば表1に挙げるように、心筋梗塞と痴呆があり、さらに血液透析を受けている場合は、スコアが1+1+2=4点になります。
このCCIを用いて、男性不妊患者さん(344人)の健康状態を、子どものある(妊孕性のあり)人(293人)と比較した報告があります。(Salonia A, et al Eur Urol. 2009; 56: 1025-1032)
これによれば、男性不妊患者さんでは、CCIスコアが有意に高く、併存病のない(スコア0)の割合が77.3% 対 88.4%で有意に低い事が判りました(表2)。

Table2

併存病が男性不妊の原因なのか、男性不妊という状態が健康状態を示す目印になっているのかは今後の研究が必要です。
ヒトゲノムの15%が生殖に関与していることを考えると、男性不妊と他の疾患に関連があることが想定されます。

不妊治療で男性の診察は必ず必要ですか?

これまでに、たびたび「不妊症はカップルの疾患で有り、女性パートナーだけでなく男性パートナーも、診察を受ける必要がある」と、強調してきました。

その中で、最も大事な理由に「不妊症の男性に精巣がんが多い」という事実があります。

最近は、男性不妊の診察で、精巣や精巣上体の触診に加えて、精巣の超音波検査は必須になっています。超音波診断装置の進歩により、2-3mmの病変でも明瞭に捉えることが出来るようになりました。

獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンターでの集計でも、1%以上の患者さんで精巣に超音波検査で腫瘤を認めます(図1)。

figure1

この精巣の小さな腫瘤病変に関する大規模な観察結果が報告されました(J Urol (2017), doi: 10.1016/j.juro.2017.08.004)。

不妊症の診察のため精巣超音波検査を受けた4088人の男性患者を調査したところ、触診では触れないのですが(本人も気づいていない)実に120人(2.9%)に1cm未満の腫瘤を認めました。18人は精巣の腫瘤を摘出するために精巣部分切除を受けました。この結果6人が精巣がん(すべてセミノーマ)と診断され、残りの12人はライディッヒ細胞腫瘍8人、セルトリ細胞腺腫1人、胚細胞無形成1人、硝子化結節1人、良性であるが詳細不明1人でした。精巣がんの6人は全員精巣摘除術を受け、stage 1の早期がんでした。この報告が出された時点では、再発や転移がなく経過していました(図2)。

figure2

この他の102人は、定期的な精巣超音波検査を受けています。そして、大きさが5mmを超えて、増大傾向にあれば手術療法が考慮されることになっています。

精巣がんは、極めて悪性度が高く、治療開始の時期によっては、抗がん剤治療を行っても救命できない場合があります。しかし、早期に発見できればほぼ100%救命できるがんです。

男性不妊外来では、常にこの精巣がんを念頭に超音波検査を行っています。

不妊症そのものは直接命に関わりません、しかし不妊症は精巣がんの存在する可能性を秘めている状態です。不妊症→精巣超音波検査を心にとめてください。2-3mmの小さな状態で発見可能です。

男性不妊症・女性不妊症に関する知識・情報はどこから手に入れていますか?

日本では、6カップルに1カップルに子どもがありません。
このことは、全カップルの1/6(約17%)が不妊症であるという事を意味しているのではありません。子どものないカップルの中には、2人の主義として子どもを持たないという場合も含まれているからです。このような、カップルの意思までも調べたような詳細な研究はこれまでに報告されていません。
さて、不妊に悩むカップル(この場合は、1年以上避妊をしていないセックスを行っているが子に恵まれないカップルと定義しましょう)は、どこから不妊症の診察・治療に関する情報を得ているのでしょうか?

考えられるのは、
マスメディアやインターネット
 書籍
 友人・知人・家族からの口コミ
 医療機関
 学校教育
というところでしょう。

東京大学のMaeda Eri先生たちのグループは、インターネット調査会社と協力して、不妊症に関する情報のリテラシーを検証しました。
具体的には、例えば、『妊娠する可能性は年齢が上がるほど低下する』という正しい知識を有していた3334人について、さらにその正しい知識を得た情報源はどこかをアンケート調査を行いました。
その結果、現在の生殖年齢はデジタルネイティブ世代(生まれたときからデジタル機器に囲まれて生活してきた世代)でる事を反映して、66%は情報源がマスコミやインターネット経由である事がわかりました(図:画像をクリックすると拡大表示されます)。

figure1

しかし、これらの情報源は、必ずしも正しい内容であるとは限りません。
特に、影響力のある有名人(芸能人など)の発する、ツイッター情報などには、思い込みや、自身の経験のみから導き出された、根拠のない情報が満載になっている場合もあります。問題は、本人が意識する、しないに関わらず、大きな影響を有していることです。
このように、気軽に手に入れられる情報があふれている時代だからこそ、正しい情報を選択するプロの力が必要になります。
獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンターのような大学附属施設には、これまで以上にしっかりした根拠のある情報のキュレーションと発信が求められています。

太っていると 精子力に影響しますか?

肥満の指数として世界中で用いられているのが、BMI( Body Mass Index)です。計算方法は、体重(Kg)を身長(m)の2乗で割って求められます。
例えば、体重70Kgで身長170cm(1.7m)の人の場合は、70÷1.7÷1.7=24.2となります。
米国で3カ所の不妊症治療施設の男性不妊患者4440人を対象にした、研究結果が公表されました(Bieniek JM, et al. Fertil. Steril. 2016; 106: 1070-1075)。
これまでは、同じような研究は数百例を対象としたものでしたが、今回は報告されている中では最多の患者数を集めたものとなっています。
精液検査の結果(精液量・精子濃度・精子運動率・正常形態精子率)・内分泌検査の結果(LH,・FSH・テストステロン・エストラジオール・プロラクチン)とBMIの関係を調べました。

まずBMIの値によって、患者さんを、やせ(,<18.5)・標準体重(BMI: 18.5-24.9)・こぶとり(25-29.9)・肥満(>30)の4グループに分け、それぞれのグループの、内分泌検査の値と精液検査の値を比較しました。
その結果、血中テストステロン濃度はBMIが大ききなるほど(肥満度が上がるほど)小さくなり、血中エストラジオー濃度ルは逆に大きくなりました。これは、不妊症の人ばかりでなく一般に肥満の人では、脂肪組織でテストステロンがエストラジオールに変換される割合が高いため診られる現象です。血中LH, FSH, プロラクチン濃度とBMIには関連が有りませんでした(表1)。
精液量・精子濃度・正常形態精子率はBMIが大きくなるほど小さくなり(悪くなり)精子濃度も同様の傾向がありました(表1)。

table1

次に、肥満度と精子濃度(無精子症・乏精子症・正常性液濃度)の関連を調べました。
小太りや肥満のグループでは、精液検査で無精子症や乏精子症である可能性が、標準体重である場合よりも有意に高いことがわかりました。また、やせの場合も、精子濃度に異常のある可能性が高い傾向にあることがわかりました(表2)。

table2

この研究は、体重が標準体重である事の大切さを示した結果となりました。
この結果の解釈で重要なのは、米国人の肥満度は驚くほど高いと言うことです。
調査が出来た3787人中、やせは27人(0.7%) 標準体重は966人(25.5% ) 小太りは1853人(48.9%) 肥満は941人(24.9%)と、肥満傾向が強い集団である事に注意が必要です。

日本での2015年の確定値で、20-40歳の男性を調査した結果、やせが20代で8.9%30、代で3.7%、標準体重が20代で64.5%、30代で66.0%、肥満(BMI>25)が20代で26.6%、30代で30.3%と、厚生労働省の国民健康・栄養調査では述べられています。このように、比較的肥満の患者さんの少ない日本人の検討にに、米国のデータが当てはまるか否かは、今後明らかにする必要があります。

さて、①肥満を何らかの治療で解消すれば、精液検査のデータは良くなるのでしょうか?
②肥満を何らかの治療で解消すれば、妊娠率は高まるのでしょうか?
③肥満を何らかの治療で解消すれば、出生率のデータは良くなるのでしょうか?
これらの疑問には、次回お答えいたします。

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