不妊治療にあたって、アビガン(ファビピラビル)はどのような影響があるのですか?

COVID-19に効果が期待されているアビガンですが、生殖に関しては様々な心配事があります。「不妊治療にあたって、アビガンはどのような影響があるのですか?」という、質問を多くいただきます。

今回は、アビガンの投与に関して女性側と男性側に対する注意点をまとめました。

アビガンの添付文書では 図1のように書かれています。図1

女性患者さんと男性患者さん向けに、服薬指導をもう少しわかりやすく書いているものもあります(図2)。図2

要約すると、

①       妊婦や妊娠している可能性のある女性には処方できない。

②       妊娠する可能性がある場合は、避妊するように指導する。

③       授乳中の女性は授乳中止

④       男性の場合は、服薬終了から7日間は、コンドームを着用した避妊を行なう。

その理由は、

新しい薬が、市場で使えるようになるためには、毒性試験を行う必要があります。

この中には、次世代に対する影響を検証する重要な試験が含まれています。

このデータで、

①②動物実験で、胎児の異常(外表異常や骨数異常や内臓異常)や胎児死亡が増加することが報告されました。

③アビガンは母乳へ移行しますから、母乳栄養を行うと新生児にアビガンを投与したことになってしまいます。

④アビガンを3日間投与された男性の精液に、アビガン中止後2日まではアビガンが検出され、7日時点ではアビガンは検出されなかったとの、データがあります(表1)。つまり、2日までの間では、性交渉によって女性にアビガンを移行させる事になります。しかし、アビガン投与終了して7日たてば、アビガンを性交渉で女性に移行させる心配がない事になります。表1

3-6日の間はどうか?これは、データがないためにわかりません。

 

瀕死の重傷の患者さんが積極的にセックスするとは思えませんが、今後症状の軽い患者さんにアビガンが用いられるようになると、問題になる点でしょう。

 

次に、精巣での精子形成にアビガンはどのように影響するのでしょうか?

これにも、データがあります。

ラットやマウス(これらは齧歯類ゲッシルイと呼ばれています)には、精子の活動性が低下したり、形の悪い精子の割合が増えるなどの問題がありました。しかし、サル(ヒトと同じ霊長類 レイチョウルイと呼ばれています)の場合は、精子形成に影響はありませんでした(表2)。この理由は、ゲッシルイでは精巣にアビガンが蓄積しやすいのですがレイチョウルイでは蓄積しないことによる事が証明されています。表2 neo

さらに、アビガン服用中止後90日に時点では、偽薬を飲んだヒトとアビガンを服用した人に精液検査の結果に差が見られなかった事も報告されています(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency への2014年のレポート)

これは、製造承認時のデータです。最近実際の患者さんに投与したデータが公表されていますので、次回はこのデータをお示ししましょう。

 

しかし、安心して子作りに望むためには、副作用に御少ない治療薬とワクチンの開発が待たれます。

良い精子を選ぶ工夫

今回は、中国の杭州市にある浙江大学から興味深い論文の紹介です。
Novel distance-progesterone-combined selection approach improves human sperm quality.
Kun Li, et al. Journal of Translational Medicine 16: 203, 2018
現在、ART(生殖補助医療)に用いる精子の選別には、比重によってわけるパーコール法が主流です。しかし、身体の中では女性の生殖器(膣→至急→卵管)を通過する間に、良い精子が選別されてきていると考えられていることから(図1)、この女性生殖器をまねたものを人工的に造りました(図2)。図1-2
A(膣に相当する)にパーコール処理した精子を入れて、左卵管(C- G)の中に精子を引き寄せるホルモンであるプロゲステロンが含まれたアガロースゲルをおきヒトの卵管内の様子を再現しました。右卵管(C-F)にはホルモンの入っていないアガロースをおいて比較対象としました。
精子を引き寄せるホルモンのある卵管のE2とホルモンの入っていない卵管D2へ泳いできた精子の状態を比較しました。
その結果、ホルモンがある卵管(E2)がホルモンの入っていない卵管(D2)よりも、正常形態精子率は有意に高く(図3)、DNA断片化率は有意に低くなりました(図4)。

図3

 

図4

 

以上から、ARTに用いる精子の選別には、有用であると結論しています。

大変、面白い結果ですが、使用された精子が健康成人のものであったため、実際の不妊症の患者さんのように精子の状態の悪い場合に有用か否かは不明です。
今後の、実際の臨床での使用経験の報告が楽しみです。
(獨協医科大学埼玉医療センター 泌尿器科 上村慶一郎)

不妊治療による退職がもたらす経済損失

少子高齢化が進む中で、女性の社会での活躍がなければ、成り立たない世の中が到来しています。本日の日経朝刊の記事によれば不妊退職による損失だけでも、1,345億円超になるとNPO法人Fine(理事長 松本亜樹子)が公表しています(図1)。

img1

男性に関しては不妊治療が原因で退社した割合は2%、女性の場合は23%という報告もあります(図2)。

img2

不妊治療を続けながら、仕事も続けられるように、企業のみならず全ての人の認識が変わる必要があります。
気になるのは、厚労省からのデータでのサンプルの少なさです。図2のデータの男性患者数はわずか89人に過ぎません。
我々の施設は、かなり多数の男性不妊患者が受診しています。これらの患者さんたちに協力していただき、詳細な調査をする必要があると思います。

結婚までの交際期間はどのくらい?

2017.11.26 | 不妊症全般, 新知識

11月22日は、その語呂合わせから「いい夫婦」の日とされています。明治安田生命保険相互会社が、「いい夫婦」の日にちなみ、今年の10月10日~10月16日に、全国20-79歳の既婚男女1596人に対して実施した、夫婦の関係に関するインターネット調査の結果を公表しました。

この中で、興味深いものは、結婚までの交際期間と、交際期間1年以下の「スピード結婚」の割合の、世代別調査結果です。結婚までの交際期間は、全例の平均値は32ヶ月でした。しかし、20歳代・30歳代・40歳代の生殖年齢と考えられる世代では、36ヶ月以上となっており、若者世代が結婚に踏み切れない様子を、如実に表した結果となっています(図1)。
figure1

さらに、交際1年以下で結婚した人いわゆる「スピード結婚」の割合も、全体の平均では32.5%でしたが、20歳代・30歳代では30%以下の低い割合となっていました(図2)。

figure2

この調査では、私たちの周りにいる若者たちに起こっている現象ですが、残念な事にこれらの原因に迫る分析はなされていません。


~体外受精するときに、精子がなかったらどうしよう~

精子濃度の極端に低い男性からのお悩み相談
~体外受精するときに、精子がなかったらどうしよう~
不妊症の治療はカップルで行う事が基本です。
ご主人の精液検査を3回行いましたが、2回はごく僅かの運動精子が存在しましたが、1回は遠心分離して何度も見直しましたが、精子を見つけることが出来ない無精子の状態でした。
このように、時には僅かながら射精液に精子が存在するが、時には精子がいないこともある場合を、cryptozoosperimia (隠れ精子症、クリプト精子症)と言っています。
このような場合に、顕微授精(ICSI)が選択されるわけですが、顕微授精の当日に射精液を調べて精子が存在しない場合は、受精に用いる精子がないために、治療がキャンセルされてしまいます。通常、採卵に備えてホルンによる刺激療法を受けていますので、女性(奥様)の肉体的・精神的・経済的負担は大きいものがあります。
そこで、「顕微授精当日に用いるべき精子がない」という事態を避けるために、あらかじめ精子を凍結保存しておくことが勧められています。(精子のバックアップ凍結保存と呼ばれています)。
しかし、このバックアップ精子凍結保存は万能ではないのです!
「確かに、凍結保存する時には精子は存在したのですが、これを融解して精子を探し出そうとしても、見つからない」と言う事態が起こりうるのです。
極少数の精子を凍結保存している場合に、実際経験される事なのです。
理由は、以下の様なことが考えられます。
① そもそも、凍結保存の時に、うまく精子が回収出来ずに1つの精子も凍結保存されていない。
② 凍結保存容器の壁に付着してしまい、回収出来ない。
③ 融解過程で、精子がこわれてしまう。
同じように、極少ない精子を凍結保存しなければならない場合が、非閉塞性無精子症で顕微鏡手術により精巣精子を採取した(MD-TESE, micro TESE)場合に、極少数の精子しか回収出来ないため、これを凍結保存して顕微授精に用いるとなると、上述したのと同じ事態が起こる可能があります。
バックアップ精子凍結保存が万能でないとは?
どの施設でも経験していることですが、実際にどのくらいの頻度で、「顕微授精の時にバックアップ凍結保存されているはずの精子が回収出来ない」という事態が起こっておるのかを調べた研究はこれまでありませんでした。
最新の研究成果が、米国の生殖医学会雑誌Fertility & Sterilityに掲載されました。
(Kathrins M, et al. Fertil Steril. 2017; 107: 1300-1304)
この研究で、射精液の精子にしろ、精巣精子にしろ、極少ない精子数をバックアップ凍結保存して顕微授精時に融解して精子回収を試みた、結果はどうだったのでしょうか?
臨床上、何となく数%ぐらい有るかな?と思っているように、クリプト精子症や総精子数が10万以下の場合、射精液中の精子を凍結保存して、これを融解して精子を探して、精子が見つからないケースが、クリプト精子症で8.5%・総精子数10万以下の場合に2.8%でおこります(図1)。

Table1

それでは、精子の由来によって差があるのでしょうか?
精子を精液から採取した時には、クリプト精子症や総精子数が10万以下の場合は7.1%で凍結保存―融解後に精子を見つけることが出来ませんでした。非閉塞性無精子症でTESEを行ない精巣から精子を回収し、凍結保存―融解した時には、クリプト精子症や総精子数が10万以下の場合は、5.8%で精子を見つけることが出来ませんでした(図2)。

Table2

やはり、数%で凍結保存後に融解した時に、精子が見つからない最悪の事態が起こるのです。
そこで、このような、事態を避けるために、非常に少ない精子(例えば1-9精子)でも凍結保存―融解後に精子が確実に回収出来る方法を、獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンターでは、確立しています。

この内容は、論文掲載されましたら、再度報告いたしましょう。

女性の妊活と仕事

2017.09.05 | 不妊症全般, 新知識

現在、女性の社会進出と若い世代の賃金が低く抑えられていることが相まって、共働きのカップルが増加しています。国内で、妊活時期の女性が労働についている割合に、地域によって差があるのでしょうか?

3世代以上が同居していた大家族の時代から、夫婦(カップル)だけの最小単位の家族構成が増加している時代ですので、大都市を抱える県とそれ以外では、家族の大きさが違うため、妊活・子育てを手助けできるマンパワーの差が色濃く出てくると、容易に想像できると思います。実際そうでしょうか?

総務省の国勢調査(平成27年)のデータから、厚生労働省のまとめた資料(http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/16c.pdf)によれば、都道府県別の女性の生産年齢(15歳~64歳)の労働力率は、島根県が74.6%と最も高く、福井県(74.2%)・富山県(73.9%)・山形県(73.5%)・鳥取県(73.4%)がこれに続いています。

労働力率が低いのは、奈良県が61.1%と最も低く、兵庫県(63.9%)・神奈川県と大阪府(64.4%)・埼玉県(65.6%)となっていました。
25歳~44歳の子育て世代に限って労働力率を見ても、同様の傾向があり、島根県(85.3%)・山形県(84.9%)・福井県(84.6%)・鳥取県(84.2%)・富山件(84.0%)でありました。子育て世代の労働力率が低いのは、奈良県(71.1%)・神奈川県(71.6%)・兵庫県(71.9%)・大阪府(72.6%)・埼玉県(72.9%)でした。

地域毎に、年齢別の女性の労働力率を示すと、図1-4のようになり、どの県もM字型の分布を示していました。(図1-4)

Figure1

Figure2

Figure3

Figure4

この中で、労働力率が高く、子育て世代での低下率(仕事から離れる率)が低い県の代表として、鳥取県を取り上げ、逆に労働力率が低く、子育て世代に仕事から離れる率が最も高い県である神奈川県を取り上げてみましょう。
未婚女性と結婚した女性の職に就いている割合は、鳥取県では年齢階層ごとに見た差が17.75であるのに対し、神奈川県では31.3%に達していました。ちなみに、未婚女性の労働力率は両県で大きな差はありませんでした。(図5)

Figure5

そして、重要な点は、それぞれの県の合計特殊出生率は、1.6 vs 1.31と大きな差がありました。
「仕事を続けやすい環境=子どもを産み育ててゆきやすい環境」
という事がはっきりと見て取れるデータといえるでしょう。

騒音は男性不妊に関係しますか?

環境騒音は、動物実験モデルでは繁殖力に影響すると結論されています。
ヒトの場合はどうでしょうか?
騒音により、ストレスが生じ、このために視床下部-下垂体-精巣系の内分泌調整機能が障害宇され、精子形成に悪影響が出るのでは?と推定されています。
この疑問に答えるデータが韓国から出てきました。(Min KB, et al. Environmental Pollution. 2017; 226: 118-124)
韓国の環境省の騒音測定結果と男性不妊の関係を調査しています。
生殖年齢を20歳から59歳と定義して、2002年の全体対象人口(男性人口)の2.2%に当たる1025340人を前向きに調査しました。
先天奇形・感染症・尿路性器の外傷・精巣がんを除外しています。
2013年まで経過観察して、男性不妊との関係を調べました。
昼間の騒音:60デシベル(dB)以下とそれ以上<ヨーロッパの環境基準に準拠>
夜間の騒音:55dB以下とそれ以上<心筋梗塞に影響があるとされる閾値>
男性不妊の定義はICD-10 code N46に従っています。用いた精液検査の基準値はなぜかWHO1999版(精子濃度の基準値が2000万/ml以上)でした。
この結果、昼間騒音が60dB以上、夜間騒音が55dB以上ではそれ以下と比較して、男性不妊の割合が高い結果でした。(図1)

Figure1

さらに、騒音の程度を4段階に分けた場解析でも、昼間も夜間も騒音が基準を超すと、どの程度の騒音でも男性不妊の割合は増加していました。(表1)

Table1

しかし、騒音の増加と男性不妊率は、相関関係は見いだせませんでした。
やはり、静かな環境は大切なようです。
日本の環境基準を示しておきましょう。この研究の基準値より、もう少し静かな環境が勧められているようです。
(表2)

Table2

若い時にがんと診断された男性の結婚と子作り

近年、青年期以前にがんと診断されたが、その後の治療のおかげでがんは治り、普通の生活が送れるようになる患者さんが増えています。
これらのがんが治癒した男性たちが、結婚して自分の子どもを持ちたいと考えるのは、ごく自然な流れであると言えます。
さて、これらの男性たちの結婚・子作りはどうなっているのでしょうか?
ノルウェーから、多くの症例を長年調査した論文が出ています。Gunnes MW, et al. BJC 2016; 114: 348-356
ノルウェーでは1953年以降、全ての臨床医と病理医はがん患者と登録することが義務づけられています。従って、この年以降の全てのがん患者に関して、全数調査が可能になっています(60年以上前のことです)。この論文では、1965年から1985年にノルウェーで誕生した男性626495人がリクルートされ、この中で2007年12月31日までに、2つめのがんを発症した人や、他国に移住した人を除外し、25歳以前にがんと診断された2687人を解析の対象としています。
これらの男性について、以下の項目ががんの種類ごとに解析されました。
①結婚しましたか?
②お子さんは授かりましたか?
③お子さんを持てた手段は、体外受精などの生殖補助技術(ART: assisted reproductive technology)を利用しましたか?
④生まれてきたお子さんに先天奇形は有りませんか?
その結果、図1 Bに示しますように、がんでない同年代の男性が結婚している状態を1とした場合、がん患者さん全体では、ハザード比(HR: Hazard Ratio)が0.93であり、わずかに結婚しづらい事が判ります。がんの種類ごとに見てみると、中枢神経系のがんや網膜芽細胞腫では、それ以外のがんと比較して、さらに結婚している割合が低くなっていました(HR: 0.6程度)

Figure1

図1 Aを見てみましょう。
25歳以前にがんと診断された男性では、子どもを持てる可能性が、がん患者さん全体でハザード比0.72と低くなっています。特に、非ホジキンリンパ腫や悪性度の高い中枢神経系のがん・交感神経系のがん・網膜芽細胞腫で低くなっていました(ハザード比 0.5~0.6)
我々泌尿器科の治療対象である、胚細胞腫(精巣がん)の男性では、ハザード比 0.77とやや子どもを授かりにくい結果でした。
子どもを授かるか否かは、結婚しているかどうかに左右されますので、結婚している男性のみを対象にして解析を行っています(図1 C)。
がん患者さん全体では、結婚している男性でも子どもを持てる可能性はハザード比 0.71と婚姻の有無を考慮しない場合と同様に低くなっていました。
非ホジキンリンパ腫の場合はハザード比 0.67、精巣がんの場合もハザード比 0.64と結婚していないより悪くなりました。
この原因に関しては、論文の中では明らかにしていません。
次に、子どもを授かるためにARTを利用した割合ですが、表1に示しますように、がんでない同世代の男性に比べて、3.32倍になっています。

Figure2

やはり、何らかの不妊治療が必要なケースが多いと言うとこです。
ここで、心配なことは、生まれてきた子どもの状態です。ARTで授かった理由は主に、精子が少ない・精子の運動絵師が悪いといった、男性因子であろうと考えられます。これらの、子どもの先天異常率・早産率・出生時体重が調べられていますが、がんでない男性の場合と同様で、悪影響は無さそうであると結論しています。
このような、しっかりした大規模研究が、国がリードして行える環境はすばらしいものだと思います。
日本国内でも、同様の研究が望まれます。

子どものいる人生と子どものない人生-寿命に関係するの?

2017.08.25 | 新知識, 未分類

子どものいる人と、子どものいない人の寿命に差があるのでしょうか?
カロリンスカ研究所からの報告が今年Journal of Epidemiology and Community Health(2017; 71: 424-430)誌に掲載されました。
1911年から1925年に生まれて、60歳時にスエーデンに居住していた男性704481人女性725290人を追跡調査しました。統計学で用いられているperson-yearsで表現すると男性で1410万person-years、女性で1760万person-yearsのデータが蓄積され解析されました。そして、様々な因子が、寿命に影響するため、教育レベルを考慮した解析がなされました。
男性の60歳時点での期待余命は、子どものいる場合20.2年・子どものいない場合18.4年でした。女性の60歳時点での期待余命は、子どものいる場合24.6年・子どものいない場合23.1年でした。
死亡リスクは、どの年齢でも男性の方が女性より高く、男女ともに子どものない場合の方が高い傾向にありました。(図1)

Figure1

この傾向は、結婚していない男性で、子どもがない場合に最も顕著に死亡リスクが高くなることが判りました。しかし、女性では、男性よりこの差はずっと少なくなります。
この原因を探るために、子どものいる人で子どもの近く(50Km以内)に住んでいる人と子どもから離れて(51Km以上)住んでいる人に分けて、それぞれを子どものない人の死亡リスクを比較しました。すると、男女ともに子どもの近くに住んでいる方が、死亡リスクが少なくなることが判りました。(図2)

Figure2

人はファミリーを形成して、そのファミリーは近くにあるようにするのが、良いようです。
還暦になると、親元へ帰る同僚が多くみられると思います。これは、自然の摂理にかなった親孝行かも知れません。

アルコールと妊娠に関する最新文献 2017

2017.08.20 | 不妊症全般, 新知識

これまでにも、アルコールと妊娠に関係がある・関係がないなど様々な報告があります。今回は、同一国内で行われた2つの最新の論文を見てみましょう。
デンマークで行われた、インターネットを利用した、前向き研究があります。2007年6月から2016年1月までに9497人の女性が登録し、最終的に6120人のデータが解析対象になりました。
参加者は、男性パートナーとの関係が良好で、明らかな不妊原因や不妊治療歴がないことが条件とされました。
まず、身長体重などの基礎的身体情報・教育水準・収入・喫煙・性周期・週間のセックスの回数・タイミング法の使用の有無・妊娠歴を登録し、子どもを作ろうとし始めてから妊娠するまで(12ヶ月以内)ないしは12ヶ月間は、2ヶ月毎に、その前月のアルコール摂取についてレポートをインターネット経由で送りました。・・・これはかなりの困難を伴う研究です。
アルコール摂取量は以下のように定義されました。
1杯:ビール1瓶(330ml)、グラス一杯の赤または白ワイン(120ml)、デザートワイン(50ml)、スピリット類(20ml)
この結果、自然妊娠にとっては、アルコールを飲まない~中等度(1週間に13杯まで)は、妊娠率に大きな影響はないことが判りました。
また、飲んだアルコールの種類によっての、差はないこともわかりました。週間14杯異常のヘビードリンカーでは、相対妊娠率が低下するのですが、特に非経産婦・タイミング法を行っている女性で傾向が顕著でした。(表1)

Table1

全体の相対妊娠率をグラフ化すると(アルコールを飲まない人を1とする)と図1の様になり、信頼区間の幅は広いものの、1週間のアルコール摂取が10杯程度から、妊娠率が低下すると考えられます.

Table2

結論としては、多数の女性が参加した前向き研究では、10杯程度と超えるアルコール摂取は、自然妊娠には悪影響があるという事です。
しかしながら、この研究からは、なぜ妊娠率が下がるのかは不明です。生活習慣に関係した事柄が、いかにして妊孕性に影響を与えるかを解明するのは、なかなか難しいことだと言えます。

2017年7月に、同じデンマークから、男性または女性のアルコール摂取が、体外受精の妊娠率に与える影響について、後ろ向きの調査を行った報告が出されました。Vittrup I, et al.Reprod Biomed Online. 2017; 35: 152-160
これによれば、体外受精を受けた12981人の女性が29834周期の体外受精を受け、アルコールを飲まない人で22.4%、アルコールを1週間に7杯以上飲む人では20.4%で子どもが生まれました。
また、男性の場合はアルコールを飲まない人のパートナーは22.6%で子どもが生まれ、1週間に14杯以上飲む人でも20.2%でした。この両者には差がありませんでした。
つまり、不妊治療としての、体外受精をしているカップルにとって、アルコールを飲むことは、必ずしもマイナスに働いていないという結果でした。
アルコールはまさに「百薬の長」と言えます、しかし「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」です。適度にすることが大切でしょう。

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