若い時にがんと診断された男性の結婚と子作り

近年、青年期以前にがんと診断されたが、その後の治療のおかげでがんは治り、普通の生活が送れるようになる患者さんが増えています。
これらのがんが治癒した男性たちが、結婚して自分の子どもを持ちたいと考えるのは、ごく自然な流れであると言えます。
さて、これらの男性たちの結婚・子作りはどうなっているのでしょうか?
ノルウェーから、多くの症例を長年調査した論文が出ています。Gunnes MW, et al. BJC 2016; 114: 348-356
ノルウェーでは1953年以降、全ての臨床医と病理医はがん患者と登録することが義務づけられています。従って、この年以降の全てのがん患者に関して、全数調査が可能になっています(60年以上前のことです)。この論文では、1965年から1985年にノルウェーで誕生した男性626495人がリクルートされ、この中で2007年12月31日までに、2つめのがんを発症した人や、他国に移住した人を除外し、25歳以前にがんと診断された2687人を解析の対象としています。
これらの男性について、以下の項目ががんの種類ごとに解析されました。
①結婚しましたか?
②お子さんは授かりましたか?
③お子さんを持てた手段は、体外受精などの生殖補助技術(ART: assisted reproductive technology)を利用しましたか?
④生まれてきたお子さんに先天奇形は有りませんか?
その結果、図1 Bに示しますように、がんでない同年代の男性が結婚している状態を1とした場合、がん患者さん全体では、ハザード比(HR: Hazard Ratio)が0.93であり、わずかに結婚しづらい事が判ります。がんの種類ごとに見てみると、中枢神経系のがんや網膜芽細胞腫では、それ以外のがんと比較して、さらに結婚している割合が低くなっていました(HR: 0.6程度)

Figure1

図1 Aを見てみましょう。
25歳以前にがんと診断された男性では、子どもを持てる可能性が、がん患者さん全体でハザード比0.72と低くなっています。特に、非ホジキンリンパ腫や悪性度の高い中枢神経系のがん・交感神経系のがん・網膜芽細胞腫で低くなっていました(ハザード比 0.5~0.6)
我々泌尿器科の治療対象である、胚細胞腫(精巣がん)の男性では、ハザード比 0.77とやや子どもを授かりにくい結果でした。
子どもを授かるか否かは、結婚しているかどうかに左右されますので、結婚している男性のみを対象にして解析を行っています(図1 C)。
がん患者さん全体では、結婚している男性でも子どもを持てる可能性はハザード比 0.71と婚姻の有無を考慮しない場合と同様に低くなっていました。
非ホジキンリンパ腫の場合はハザード比 0.67、精巣がんの場合もハザード比 0.64と結婚していないより悪くなりました。
この原因に関しては、論文の中では明らかにしていません。
次に、子どもを授かるためにARTを利用した割合ですが、表1に示しますように、がんでない同世代の男性に比べて、3.32倍になっています。

Figure2

やはり、何らかの不妊治療が必要なケースが多いと言うとこです。
ここで、心配なことは、生まれてきた子どもの状態です。ARTで授かった理由は主に、精子が少ない・精子の運動絵師が悪いといった、男性因子であろうと考えられます。これらの、子どもの先天異常率・早産率・出生時体重が調べられていますが、がんでない男性の場合と同様で、悪影響は無さそうであると結論しています。
このような、しっかりした大規模研究が、国がリードして行える環境はすばらしいものだと思います。
日本国内でも、同様の研究が望まれます。

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