精通現象(夢精:眠っている間に性的な夢を見て射精してしまう現象や、マスターベーションの経験)が無いために、がん治療前の精子凍結保存は出来るのかどうかという質問をたびたび受けます。
答えは、YESです。
思春期が来る途中であれば、精巣(睾丸)内では射精はまだ無くても精子形成が始まっていることがあるのです。
ですから、あきらめないでまず相談です。
最近。こんな患者さんがおられました。
14歳 男子(A君)
急性骨髄性白血病に対して化学療法受け、一時的は治癒判定を受けるも、再発したためさらに強い抗がん剤治療の予定が示され、同時に同種造血細胞移植(骨髄移植や臍帯血移植)を行うため、全身放射線照射予定され、治療後の無精子症の確立が高いことが判ったため、紹介受診されました。
しかし、A君は今までマスターベーションをしたこともないし、夢精も経験していないとの事でした。
お父様を含めて(このときは父親の役割は大切です)、精子凍結保存法について話し合いました。
1.マスターベーション教育をする
2.精巣精子採取(TESE)を試みる
2つのオプションを示した結果、TESEを選択されました。
そこで、麻酔下の援助の元に緊急TESE(microdissection TESE; MD-TESE, micro TESE)を行い、顕微授精10回分ほどの精巣精子を凍結保存しました。普通のTESEでは精子回収が出来なかったためMD-TESEに切り替わりました。(子供のトラウマを最小限にするために全身麻酔が望ましいです)
その結果、精巣精子を回収することに成功しました。
元々の病気(急性骨髄性白血病)の治療が優先されるのは当然ですが、治癒確立が極めて高いので、出来るだけその後の事も患者さん本人と両親を交えて話し合う必要があります。このような機会(場所)を獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンターでは提供できていると思います。
大切なことは、まず専門家への相談です。
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