男性不妊の基本検査である、精液検査の落とし穴についてシリーズで解説します。
まずは、精液検査は血液検査と違い、結果が大きく変動するという事をご存じですか?
血液検査(赤血球濃度・白血球濃度・血色素濃度・血小板濃度)は、午前中でも午後でもほとんど変化しません。もちろん、水分摂取によって多少は変動しますが、午前中は貧血だったが、午後は多血症と診断されるということはありません。
しかし、精液検査ではこのようなことが、頻回に起こるのです。
多くの不妊クリニックでは、精液検査は忙しいご主人が来院して受けるのでは無く、仕事に出かける前に(早朝)自宅で(奥さんの近くで)マスターベーションにより、容器に採取して、これを奥さんがクリニックに運んで、検査を行なう、という流れになっていると思います。
しかし、ここに大きな落とし穴(罠)があるのです。
精液検査の中で、精子運動率には採取してからの時間が、結果に大きく影響を与えるので、精子濃度についてのみ考察してみましょう。
僕たちの診察を行なっている不妊クリニックでのデータです。同一患者さんの、精子濃度を早朝に自宅で採取した場合と、休日の昼間ないしは仕事が終わった夜間に、クリニックで採取した場合を比較しています(画像をクリックして拡大)(Fig. 1)。
pit hole part 1 2013.7.19
驚いたことに、80%の人で後者の方が、精子濃度が高いのです。
早朝・自宅採精で200万/mlの人が、クリニックで夜間採精したら3000万/mlという例もあります。
これは、治療方針の決定に大きな影響を与えると言えるでしょう。
精液検査結果が、良くない場合は、精液の採取条件を見直すことが大切ですね。
さらに、詳しくは拙著(男を維持する「精子力」ブックマン社)も、参考にしてください。