染色体検査を勧められました

多くの不妊治療を行なっている施設(クリニック・病院)で、染色体検査が行なわれています。男性不妊に限って言えば、精液検査で精子が見つからない無精子症患者さんで、精子の通り道(精路)の通過障害のない、いわゆる非閉塞性無精子症患者さんや、高度乏精子症(100万/ml以下)患者さんの場合に、行なわれることが多い検査です。

この検査で重要なのは、検査実施に当たり、医療者が注意しておくべき、基本的事項と原則について、日本医学会からガイドラインが出されているという点です。

具体的には、「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」として、公開されています。

特に、不妊に悩む患者さんカップルにとって重要なのは、遺伝学的検査に含まれる、染色体検査を行なうときに、事前に担当医師が患者さんからインフォームド・コンセントを得なければならないことと、遺伝カウンセリングを実施するように、求められていることです。

染色体分析を行なう前に、この検査を受けることの利益・不利益・検査を受けない権利・検査を受けた結果判る情報・検査結果がその後の治療法選択に与える影響などに関して、十分な説明を行ない、これに納得した患者さんが、その旨を署名してから検査が行なわれるべきである、という事です。

また、遺伝カウンセリングに関しては、「情報提供だけでなく、患者・被験者等の自立的選択が可能となるような心理的社会的支援が重要である事から、当該疾患の診療経験が豊富な医師と遺伝カウンセリングに習熟した者が協力し、チーム医療として実施することが望ましい」、と述べられています。

つまり、不妊治療に関わる医師だけでは無く、遺伝カウンセリングを提供するか、または紹介する体制を整えておく必要がある、と言うことです。

僕たちの施設では、このガイドラインに従った医療を提供するようにしていますが、小規模のクリニックや忙しい外来診療の中で、行なうことはなかなか困難なことでしょう。

しかし、染色体分析を勧められたら、迷わずに遺伝カウンセリングのことや、インフォームド・コンセントの事にいて、尋ねてみましょう。『お任せします』では、納得のいく診療は受けられません。

遺伝学的検査実施時に考慮される説明事項の例を以下に提示します(出典:医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン)。Table 1

参考にしてください。
遺伝学的検査の説明2013.7.29

次回は、さらに進んだ遺伝学的検査である、Y染色体微小欠失の検出法最も進んだ検査法の一つの、アレイCGH法について説明します。

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