どんな食べ物が精子に良いですか?

「どんな食べ物が精子に良いですか?」
これも、患者さんから尋ねられる事です。
これまでに、環境から入ってくるエストロゲンが精子に悪い影響を与えていることは明らかになっていますが、欧米では特に、食べ物として入ってくるエストロゲンの60-80%がミルクによるものであると言われています。

高脂肪食の人は、形態異常精子率が高かったり、直進運動精子率が低かったとの報告があるため、Chavarro博士たちは、高脂肪食と精液所見の因果関係を調べました。(Fertil Steril 101: 1280-1287, 2014)

まず、マサチューセッツ総合病院の不妊センターに人工授精または体外受精を受けに来た患者(女性)のご主人に、食物摂取頻度調査票(FFQ)を渡して、思い出しての記録ではなく前向きに食事内容を記録してもらいます。その内容から、高脂肪食はどうか・ミルクは何を飲んだか・チーズの種類は・ピザは食べたか・・・・とこと細かに記録してもらいます。それから精液検査をして、摂取食物との関連を調べたのです。

摂取カロリー別に、4群に分けて比較してみると、最も高カロリー食であったのは、白人で喫煙歴がない人たちでした。そして、この人たちは、朝食は冷たいシリアルが多く、タンパク質と飽和脂肪酸に富んだ食事内容でした。

精液検査との関係では、
① チーズの摂取量が多いほど有意に精子濃度が低く、総精子数と前進運動率も低い傾向がある.
② チーズ摂取の多い群は、低い群に比較して総精子数が31.9%、精子濃度が38.5%、前進運動精子率が5.4%低い.
③ 低脂肪食の群は、高脂肪食の群に比較して、33.3%精子濃度が高く、9.3%前進運動精子率が高い.
④ 低脂肪ミルクをよく飲む人は余り飲まない人に比較して精子濃度が29.9%、前進運動精子率が8.7%高い.
と言う調査結果でした.

また、背景因子を揃えてみると、低脂肪食の頻度が高いほど・低脂肪ミルクを飲む回数が多いほど、精子濃度が高いと言う結果も出てきました。
(画像をクリックして拡大・Fig. 1)
2014.5
Fig.1 2014.5.24

この理由は、内分泌の面から・インスリン様成長因子IGF-1の面から推察していますが、十分な説明には至っていません。
単純に、この結果を日本人に当てはめるわけには行きません。世界に冠たる雑食の日本人で調査すれば、きっと違ったデータになると思います。今後の、我々の研究に期待して下さい。

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