AYA世代の男性がん患者さんの妊孕性温存(次世代を作る能力を残しておく)ための、第一選択は精子凍結保存ですが、実態はどうなっているのでしょうか?
国内には、大規模な研究はありませんので、外国のデータを示しましょう。
Sperm cryopreservation in adolescents and young adults with cancer: results of the French national sperm banking network (CECOS). Fertil. Steril 103: 478-486, 2015
フランスで行われた、AYA世代の男子の精子保存の実態に関する報告です。
今回の研究組織であるCECOSに参加した23カ所の精子凍結保存施設からの4345例の解析結果です。
対象となった疾患は、前回のブログに書きましたように、悪性リンパ腫40%、白血病15%、胚細胞腫瘍 24%、悪性骨腫瘍10% 軟部組織肉腫3%、その他の癌2%、中枢神経系腫瘍2%、その他4%となっています。
これらは、原則として全て、治療開始前に精子凍結保存の説明がなされ、実際に凍結保存されています。
対象となった疾患の変遷は、Fig1 1Aに示されているように、はじめは悪性リンパ腫がほとんどですが、次第に胚細胞腫瘍や白血病が増加してきています。
Fertil. Steril 103: 478-486, 2015を改変
精子凍結保存の年齢分布では(Fig. 1 B)興味深いことに、14歳以下の男子で精子凍結保存がなされたのは1984年からなので、そう古いことではないのです。
精子採取方法は、マスターベーションが基本ですので、最も若いマスターベーションでの精子回収・精子凍結保存の出来た男子の年齢は12歳であったと報告しています。
さらに、興味深いのは血液がん患者さん(悪性リンパ腫+白血病)と胚細胞腫瘍を分けて考えた場合、年代別にそれぞれのがん患者さんの中でどのくらいの割合で精子凍結されたかを示している点です。(Fig.2 )
なんと、2005年時点では、15歳以上であれば血液がん・胚細胞腫瘍の90%以上で精子凍結保存がなされています。
10歳-14歳の男子でも、1984年以降徐々に精子凍結保存が増加していることが判ります。
そして、極めつけは採取出来た精液の検査結果です。(Table-1)
意外と良好であることが判ります。
我々の、リプロダクションセンターでのデータはもう少し症例数が集まれば、報告しましょう。
Fig.1 疾患別・年齢別 精子凍結保存時の精液所見
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