最近の男性不妊患者さんの中には、体毛のほとんど無い(ツルツルの)人が増えてきています。髭だけではなく、脇毛、スネ毛、そして陰毛(恥毛:pubic hair)までも無いのです。どう見ても先天的に体毛の薄い(無い)人とは思えないので、「どうして処理しちゃったの?」と尋ねると、異口同音に「何となく汚いし、相手に対するエチケットですよ」という答えが返ってきます。
それでは、毛の処理には(むだ毛の処理には)男性よりも長い歴史のある女性の場合はどうなのでしょう?
米国のインディアナ大学のHerbenickらが興味深い報告をしています。(Herbenick D, et al. Pubic hair removal and sexual behavior: Finding from a prospective daily diary study of sexual active women in the United States. J. Sex Med 10: 678-685, 2013)
Herbenickらは、アメリカ、イギリス、オーストラリアで若い女性を中心に、pubic hairを全部処理してツルツルにしてしまう人が急増していることを2005年ぐらいから気付いていました。
そこで、この原因がセックスにあると考えて、pubic hairを処理することとセックスの関連を、インターネットを用いて調査しました。方法は、手の込んだもので、セクシュアルヘルス、ウィメンズヘルスと健康に関する情報を供給したりレスビアンやバイセクシュアルな人たちに、健康に関する情報を発信するWeb上のサイトで、18歳以上でsexually activeな参加者を募ります。
ここで重要なのはsexually activeの定義です。1ヶ月に4回以上、自分でマスターベーションをする、パートナーと経膣性交ないしはアナルセックスをする、パートナーにマスターベーションをしてもらうこと、と定義しています。この条件に合致した人に、5週間毎日性行動やpubic hairの処理についての日記を書いてもらうのです。
過去のことを思い出しで記載するのでは無く、毎日日記を付けるようにメールが届き、これに反応して毎日書き入れてメールで返信するのです。そして、全てのデータを5週間記入できた人は、ご褒美(インターネット上で使えるギフトカード)をインセンティブとしてもらえるのです。
なんと、2354人のデータが集まりました。この参加者の背景を見ますと、(画像をクリックして拡大・Table 1)のようになります。
table 1. 2013.9.14
結婚している、ヘテロセクシュアルな白人女性が大多数を占めています。参加者の平均年齢は32.69歳でした。
一体どのくらい、pubic hairの処理をしているのでしょうか?
調査した5週間の間に57.5%の女性が1回以上pubic hairの処理をしています。そしてその手段は99%がカミソリでの手入れです。残りはWaxやエステサロンでの永久脱毛です。
日本でのデータはありませんが、着実に増えていると思います。
次に、pubic hairの処理をした当日に外性器の症状やセックスに関連して何をしたかを調べています。(画像をクリックして拡大・Table 2)
table 2 2013.9.14
何が彼女たちにpubic hairの処理をさせるきっかけになったのでしょうか?
Pubic hairの処理と有意に関連しているのは、年齢が若いこと、セックスに興味があること、膣に何らかの症状がある、外性器にクリームを塗っている、膣に指を挿入する、指でクリトリスを刺激する、夫以外のセフレがいる、と言う因子が浮かび上がって来ました。
これは、どう解釈すれば良いのでしょうか?
外性器にクリームを塗っているのは、カミソリまけを防ぐためと考えられます。そのほかは、性行動が活発化している事を示しています。
しかし、意外な事に経膣性交やアナルセックスはpubic hairの処理の有無とは関係しないようです。つまり、いつもセックスをしている配偶者(夫)とのセックスでは、pubic hairの処理はセフレに対する時ほど問題にならないようです。従って、相手に対するエチケットとは、セフレに対する事を意味するのです。
男性に関するデータはありませんが、ツルツルの下半身を見たら男性も女性も、その影にいる同性(異性)の他人にご用心。