サプリメントの中には、大きく分けて食品などから有効成分を抽出したものと有効成分を化学合成したものがあります。

前者の代表が、ピクノジェノール・トンカットアリ・マカ・セサミンなどです。後者の代表はビタミン類(Vit. C, Vit E)やコエンザイムQ10(CoQ10)などです。

前者の場合は、一般的に有効成分の含有量が少ないため、多量(錠剤やカプセルの場合1日10錠や10カプセル以上)を飲む必要があります。これに対して、後者の場合は有効成分そのものを用いるため、錠剤やカプセルの飲む量を1日2錠や2カプセルに減らすことが出来ます。

私たちは、CoQ10に着目して、20年ほど前から医科用のCoQ10としてノイキノンを男性不妊患者に自由診療で用いてきました。ノイキノンは10mg錠ですので、1日6-9錠を服用して頂き、運動性の改善効果を認めてきました。特に、精索静脈瘤患者には有用性が高いため、手術前の期間に服用して頂いていました。(画像をクリックして拡大・Fig. 1 unpublished data)
Fig.-1-2013.9.7
Fig. 1 2013.9.7

最新のCoQ10と男性不妊に関する報告をご紹介しましょう。

イタリアのFesta,RらがAndrologiaに発表したものです。(Festa R, et al. Coenzyme Q10 supplementation in infertile men with low-grade varicocele: an open uncontrolled pilot study. Andrologia. 2013 Aug 22. doi: 10.1111/and.12152. [Epub ahead of print])

19歳から40歳の、grade Iないしgrade IIの精索静脈瘤以外に原因の明らかでない男性不妊の患者に、CoQ10を100mg/日投与して、精液検査のパラメータの変化と精液の総抗酸化能を、投与前後で比較しました。

12週間の治療前後で、精子濃度・精子運動率が有意に改善し、精液の総抗酸化能は有意に増加したと報告しています。(画像をクリックして拡大・Table 1)
table-1-2013.9.7
table 1 2013.9.7

この論文で重要なのは、以前に無力精子症(asthenozoospermia)の男性不妊患者さんに、CoQ10とプラセボ(偽薬)を飲んでもらった二重盲検試験(最も厳しい臨床試験)で効果の確かめられていたCoQ10の使用を、精索静脈瘤患者さんに限定しているところです。(Balercia G, et al. Coenzyme Q10 treatment in infertile men with idiopathic asthenozoopsermia: a placebo-controlled, double-blind randomized trial. Fertil. Steril. 91: 1785-1792, 2009)

これは、精索静脈瘤患者さんの精巣内には酸化物質が増加しているために、これを打ち消す役割を果たすCoQ10が有用であると主張する私たちのデータを補完するものになりました。

現在、さらに抗酸化作用を強化したサプリメントが、精子力向上に有用である事を示したデータを投稿中です。出版されましたら、改めてご紹介いたします。