胎生期に左右生殖節の癒合が不完全なために起こる、膀胱の先天異常です。恥骨より頭側の下腹部正中で、腹壁(皮膚・筋層)と膀胱前壁が欠損しているため,飜転した膀胱粘膜面が体表に露出して誕生してきます。膀胱壁が一部露出したのみの軽症から,尿管口が露出したものや、恥骨解離と尿道上裂を伴うものまで、スペクラムが広い疾患であります。

生下時から、尿路再建・尿路変向や腹壁の修復術(美容形成術)など、複数回の手術を行なう必要があります。

さらに、鎖肛や停留精巣などの複数の先天奇形を持つ場合もあり、これらを克服して、成人に達するまでの、患者(患児)自身とその両親の苦労は、大変なものです。

男性不妊治療を専門に行なう僕たちの診療に訪れるのは、この大変な苦労を乗り越えて、学問を修め、職に就き、結婚して(結婚する予定で)こどもを授かりたいために相談に来られる患者さんたちです。

これらの患者さんに特徴的なことは、「性格がとても良い」ということです。子どもの頃から、複数回の手術に耐え、その過程で自分を取り巻く人々から受けた恩恵に対する、感謝の気持ちを常に持っているため、他者に対してとことん優しく誠実な人柄の人が多いと思うのです。

自然と、診療に力が入ってきます。

さて、この膀胱外反症の治療後(手術後)の妊孕性はどうなっているのでしょうか?

多くの症例を集計したレビューやメタアナリシスはありませんが、2つの論文をまとめてみました。

Deans R, Banks F, et al. Reproductive outcome in women with classic bladder exstrophy:
an observational cross-sectional study. AJOG 2012,206: 496e1-e6.

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Baird AD, Sanders C, et al. Coping with bladder exstrophy: diverse results from early attempts at functional urinary tract surgery. BJUI 2004, 93: 1301-1308.

スライド2

Table 1-2

①                膀胱外反症・総排泄腔外反症の妊孕性に関する報告は少ない.
②                男性患者では、尿路変向の影響で性交可能な者は10-205%.
③                女性患者の約80%は、sexually active.
④                男性患者では、精巣精子でICSIが確実な挙児手段.
⑤                女性では、68%で妊娠成立(73%が自然妊娠)
⑥                女性患者の妊娠率は56%.
⑦                ARTの早期からの適応で、妊娠率が改善する可能性.

個人的な経験症例は、3例ですが、近代生殖補助技術(modern ART)が、ますます進歩していますので、多くの患者さんで挙児可能になると思います。一度、これまでの患者さんの妊孕性に関する全国調査を行なってみる必要があると感じました。