出生率と経済

21014年5月20日の日本経済新聞にとても興味深い記事(「財政再建、出生率の視線を」)が載っていました。
(画像をクリックして拡大・Fig. 1)
20140521
Fig. 1 2014.5.21

現在の日本の合計特殊出生率は1.41(本年度発表)ですが、今後に関して国立社会保障・人口問題研究所の人口推計ではもう少し低下すると予測されています。この中で、中間的な推計値である中位推計では出生率は1.35と予測されており、これを元に議論が展開されています。
記事を書いた、世界平和研究所主任研究員の北浦修敏氏によれば、出生率が1,35の中位推計の値で今後22世紀まで続くとすると。生産年齢人口は、2040年以降毎年1.5%ずつ減り続け、これに伴って、政府の支出は増加し、2070年頃に現在よりも7%増して、プラトーに達すると計算されています。この支出をまかなうために、消費税率を現在よりも14%程積み増さないといけなくなるというのです。
これに対して、出生率が2.07に増加した場合は逆に2040年頃から、新たに生まれた世代が生産年齢人口に加わるため、2090年までに現在の水準の政府支出に戻すことが、可能になるというのです。消費税率も、一時的には上昇しますが、現在と同じ水準に戻すことが可能になるというものです。

国が豊でなければ、子どもを産み育てることは出来ません。
不妊治療だけで解決するわけではありませんが、少子化対策は正に待ったなしの崖っぷちになっている事がお分りになるでしょう。
今、手を打ってもその効果が出始めるのは2040年頃です。
つまり、4半世紀のギャップがあるのです。

新潮45の6月号に取材記事が掲載されました

2014.05.21 | 未分類

■新潮社「新潮45」6月号

新潮45の6月号(5月17日発売)に取材記事「「男性不妊外来」へ行ってきた 45人しかいない治療のプロ」が掲載されています。

以下、記事のリードから。
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不妊の半数近くは男性が原因、しかし男性不妊専門の医師は泌尿器医の1%にも満たないのだ。52万人が悩む、治療の最先端。
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20140517

事務局
 

たばこと男性不妊 第1話

よく尋ねられる事ですが、『タバコは不妊に影響しますか?』
医者の立場としては、第一に身体に悪いから禁煙を勧めます。
今日は、タバコと男性不妊についてのお話しのその1です。

タバコは細胞の活性酸素産生を誘導して精子の不飽和脂肪酸を多く持った細胞質膜にダメージを与える事が判っています。そのほかの,メカニズムはどうでしょうか?

精子形成過程で、精子のDNAをパックしているヒストンというタンパク質がtransition proteinになりクロマチンの濃縮が起る過程でプロタミンというタンパク質に置き換わります。この間に精子は大きく形を変え伸張精子細胞(elongated spermatid)に変わります。
小さな精子頭部に、遺伝情報がぎゅうぎゅう詰めにパックされるためには、このヒストン⇒プロタミンの置換が必要になります。この置換が正常に起っていない精子は受精に寄与しないと考えられています。

中国からこれに関して、タバコとの関連を研究した興味深い論文が発表されました。(Yu B, et al. Fertil. Steril. 101: 51- 57, 2014)
Yu先生(Guangzhou医科大学:広州医科大学)らのグループは、147人のヘビースモーカー(1日2パック以上 5年以上)と175人のノンスモーカーの不妊外来患者で以下の検討を行いました。
(画像をクリックして拡大・Table.1)
Table-1.-2014.5.20
(Table 1)Table 1. 2014.5.20

① 喫煙と精液中のニコチン代謝産物のコチニン(cotinine)の関係
② 喫煙と精液検査所見の関係
③ 喫煙とヒストン⇒プロタミンの置換の関係(ヒストン置換異常率)

コチニンの濃度は勿論ヘビースモーカーが高いことが判りました。
さらに、コチニン濃度が高いほど、精子運動率が低く・生存精子率が低く・精子濃度や総精子数も低いことが判りました。
喫煙との関係では、総精子数はヘビースモーカーが有意に少なく、ヒストン置換異常率は有意に高いことが判りました。
次に、このヒストン置換異常率をヘビースモーカーとノンスモーカーの中で精子濃度と精子運動率で層別に検討しました。
精液検査で正常の場合でも、ヒストン置換異常率はヘビースモーカーでは19.6±9.1%とノンスモーカーでの16.8±7.8%より有意に高いことが判りました。
同じヘビースモーカーでも、精子濃度が低い人や精子運動率が低い人はヒストン置換率異常が有意に高いことが分かりました。
この研究からも、喫煙は、百害あって一利なしです。

最近は、スモーカーが少しずつ減少していますが、未だにゼロにはなりません。
(大都市圏では減っていますが、地方都市ではまだまだです)
少なくとも、不妊に悩む男性にとって、禁煙は当然の取るべき行動であると思います。
常々思っていることですが、こんな事を書くぐらいなら(身体に毒であると認識しているならば)販売を中止すべきでしょう。
(画像をクリックして拡大・Fig. 1)
Fig.-1-2014.5.20
(Fig. 1)Fig. 1 2014.5.20

せめて、精子に関しても、これぐらい直接的に悪影響がある事を示すべきでしょう。
(画像をクリックして拡大・Fig. 2)
FIg.-2.-2014.5.-20
(Fig. 2)FIg. 2. 2014.5. 20

女性総合サイト「マイナビウーマン」に取材記事が掲載されました

2014.05.07 | マスコミ紹介

■マイナビウーマン「ビューティ&ヘルス」の女性ニュース

女性総合サイト「マイナビウーマン」にて、取材記事が掲載されました。

不妊原因の48%は男性にある! 男性側にある不妊の原因と検査の必要性とは?
サウナやひざ上でのノートパソコンは厳禁!? 精子の質を低下させる原因

事務局

産経ニュースに学会発表が紹介されました

2014.04.24 | 記事紹介

■産経ニュース「精子も35歳から老化 受精能力が低下 独協医科大が研究まとめ」

産経ニュースに日本産科婦人科学会での研究発表が紹介されました。
以下、記事から
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男性の精子の受精能力が35歳を境に低下する傾向が、独協医科大越谷病院(埼玉県)の岡田弘教授らのグループの研究で明らかになった。18日から東京都内で開かれた日本産科婦人科学会で発表した。不妊は晩婚化の進行による女性の「卵子の老化」などが主な原因とみられていたが、精子の老化も影響している可能性がある。岡田教授によると、男性の加齢によって受精能力が低下することが実証されたのは初めて。
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◎産経ニュース「精子も35歳から老化 受精能力が低下 独協医科大が研究まとめ」

事務局

精子力は35歳から低下する 〜日本産科婦人科学会学術講演会

18日(金)から東京国際フォーラムにて開催されている日本産科婦人科学会学術講演会「ミニワークショップ 妊娠成立と男性因子」において、「精子力は35歳から低下する」と題して、精子も35歳以降受精能力が低下する可能性があるとの研究結果を発表しました。

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■精子力は35歳から低下する

女性の加齢に伴う卵子の老化が妊娠率の低下を引き起こすことはよく知られていますが、男性の加齢が精子の受精能力にどのように影響を及ぼすのかについてはそれほど知られていません。そこで、男性の加齢の精子の卵活性化能への影響を調べるべく、妊孕性の確かめられた健常男性25名と男性不妊外来患者で精液所見に大きな異常のない特発性(原因不明の)不妊患者65名を対象に、一人の男性から採取した精子と複数のマウス卵への顕微授精を実施し、その後の卵活性化率から、精子の「妊娠させる能力」を測定(MOAT:mouse oocyte activation test)しました。

その結果、健常男性の精子ではMOATからみた卵活性化能は加齢による大きな低下は認められませんでしたが、特発性男性不妊患者の精子では35歳以降で急速な卵活性化能の低下(35-40歳:62%、40-45歳:52%、45-50歳:39%)が認められました。

このことから、高齢カップルの妊娠率の低下は、卵子の老化だけでなく、男性パートナーの精子機能の加齢による影響も関与している不妊カップルが多数存在すると考えられます。

日本産科婦人科学会サイト
読売新聞「卵子だけでなく精子も35歳から老化…不妊原因」
日刊スポーツ「精子は卵子と同様に35歳から老化」

精子機能検査「MOAT(=Mouse Oocyte Activation Test)」

事務局

日経トレンディネットに取材記事が掲載されました

2014.03.12 | マスコミ紹介

■日経トレンディネット「男こそアンチエイジング」

日経BP社の日経トレンディネットの連載記事「男のアンチエイジング」の第14回で取材記事「精子が老化する男としない男がいる!?」が掲載されました。

以下、記事のリードから。
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年を取ると「男らしさ」は失われていく。残念なことだが、いつまでも若い頃の外見・体力・健康は保てない。それを防ぐにはどうすればいいのか? この連載では第一線で活躍する専門家たちに、「男のアンチエイジング」の最先端を解説してもらう。今回は男性にとって若さのバロメーターともいえる「精子力」について、獨協医科大学越谷病院泌尿器科の岡田弘主任教授に解説してもらう。
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◎日経トレンディネット「男こそアンチエイジング」第14回精子が老化する男としない男がいる!?

「第24回日本性機能学会 東部総会」終了

昨日(2月22日)
「第24回日本性機能学会 東部総会」を無事終了いたしました。

http://maleinfertility.jp/blog/?p=1187

『女目線の性機能、男目線の性機能』をテーマに
セミナー、シンポジウムを行い、一般演題(20題)の講演をいただきました。

どうもありがとうございました。   (事務局より)

 

seikinou_20140222_01 seikinou_20140222_02

第24回 日本性機能学会 東部総会の最終案内です

いよいよ、今週末(2月22日)に、第24回日本性機能学会 東部総会を開催します。
テーマは『女目線の性機能、男目線の性機能』としました。
場所はJR品川駅から徒歩3分のTKP品川カンファレンスセンターANNEXです。
会場「TKP品川カンファレンスANNEX」へのアクセス

午前11時55分に 会長挨拶、そして、正午(12時)のランチョンセミナーから開始です。

◎ランチョンセミナー 「動物の性行動」
 寺田 節 先生(獨協医科大学実験動物センター)
 座長 齋藤 徹 先生(日本獣医生命科学大学)

◎シンポジウム「女性性機能障害」
 座長 永尾 光一 先生(東邦大学大森病院泌尿器科・リプロダクションセンター)
    中島 久美子さん(読売新聞東京本社 医療部記者)

「女性ががんになったとき-セクシュアリティーを見る「女目線」と「男目線」
 高橋 都 先生(国立ガンセンター癌対策情報センター)

・「女性性機能とセックスカウンセリング」
 宋 美玄 先生(川崎医科大学)

◎イブニングセミナー 「性欲を科学する」
 座長 佐々木 春明 先生(昭和大学藤が丘病院 泌尿器科)
    白井 雅人 先生(順天堂大学医学部附属浦安病院 泌尿器科)

・「私のセックス・セラピー」
  阿部 輝夫 先生(あべメンタルクリニック)

・「女性の性欲について考える」
  丹羽 咲江 先生(咲江レディスクリニック)

この他に、一般演題を20題お寄せ頂いております。会の終了後には、近くのBar segredoで意見交換会と総会賞授与式を行ないます。性機能障害に関する新知見満載です。

先週末に大変だった雪もなさそうですので、非会員の方も・メディア関係の方も、是非ご参加下さい。
会費は6,000円(学生1,000円)です。なお、事前受付は不要です。

「どの日にタイミングを取れば妊娠しやすいのですか?」「夫の年齢は妊娠しやすさに関係ありますか?」

この2つの質問は繰り返し尋ねられる質問です。

日本の中にはこれに答える大規模調査はありません。しかし、少し古いですが2つの質問に見事に応えた最も有名な論文を紹介しましょう。これまでに、多くの論分や著書で引用されています。Dunson DB, Colombo B, Baird D. Changes with age in the level and duration of fertility in the menstrual cycle. Hum Reprod. 27: 1399-1403, 2002

このイタリア人のグループは、782の自然妊娠を目指しているカップルの、月経周期とsexを行なった日(月経周期の何日目にsexしたか)それと妊娠の有無を合計5860周期にわたって調査しています。排卵日は基礎体温から推測しています。排卵日を0日として、その前4日にsexすれば-4日という事になります。
この結果、月経周期からみたsexの日と妊娠成立には、大変興味深い3つの結果が判りました。
20140216_1図1)図12014.2.16

①排卵日から6日前から排卵後2日までの9日間にしか妊娠のチャンスは無いこと(妊娠率5%以上を妊娠のチャンスとした場合)。
②排卵日よりも2日前(-2日)が最も妊娠率が高かったこと。つまり、基礎体温から見た場合は、排卵日の2日前のsexはお薦めです。
③妻の年齢が上がるほど、月経周期のそれぞれの日における妊娠率は階段状に下がること。

ここで、考えなければならないのは、夫の年齢です。

夫の年齢によって、月経周期での妊娠可能な期間は影響を受けるのかと言う疑問があります。これを解析した結果は妻の年齢が19-26歳、27-29歳,30-34歳では夫の年齢に関係なく-6日から±2日までが妊娠のチャンスがあるのですが、35-39歳の場合は夫の年齢は妻の年齢よりも5歳高くなると、妊娠のチャンスは-5日から+2日までの8日間と1日短くなる事が判りました。女性生殖器内での精子の寿命が短くなることが原因と推測しています。

さて、さらに解析を進めていきます。

妻の年齢と夫の年齢と月経周期での妊娠の確率を検討しました。妻の年齢別に、夫が同い年の場合と5歳年上の場合に分けて、どの日にsexしたら妊娠の確率がどのくらいあるかを調べました。

>20140216_2(図2a, b, c)図2 2014.2.16

これを見ると、妻の年齢が19歳から34歳までは夫の年齢が同い年でも5歳年上でも妊娠率に差がありませんが、妻の年齢が35-39歳の場合は夫が同い年の場合と比較して5歳年上の場合は妊娠率がグンと低くなるのです。

ここでも、精子力の35歳問題がすでに明らかになっていたのです。

この論文では残念なことに、年下の夫(姉さん女房)の場合は妊娠率がどう変化するかについては報告されていません。今後、さらに研究が進む分野だと思います。

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