肥満の指数として世界中で用いられているのが、BMI( Body Mass Index)です。計算方法は、体重(Kg)を身長(m)の2乗で割って求められます。
例えば、体重70Kgで身長170cm(1.7m)の人の場合は、70÷1.7÷1.7=24.2となります。
米国で3カ所の不妊症治療施設の男性不妊患者4440人を対象にした、研究結果が公表されました(Bieniek JM, et al. Fertil. Steril. 2016; 106: 1070-1075)。
これまでは、同じような研究は数百例を対象としたものでしたが、今回は報告されている中では最多の患者数を集めたものとなっています。
精液検査の結果(精液量・精子濃度・精子運動率・正常形態精子率)・内分泌検査の結果(LH,・FSH・テストステロン・エストラジオール・プロラクチン)とBMIの関係を調べました。

まずBMIの値によって、患者さんを、やせ(,<18.5)・標準体重(BMI: 18.5-24.9)・こぶとり(25-29.9)・肥満(>30)の4グループに分け、それぞれのグループの、内分泌検査の値と精液検査の値を比較しました。
その結果、血中テストステロン濃度はBMIが大ききなるほど(肥満度が上がるほど)小さくなり、血中エストラジオー濃度ルは逆に大きくなりました。これは、不妊症の人ばかりでなく一般に肥満の人では、脂肪組織でテストステロンがエストラジオールに変換される割合が高いため診られる現象です。血中LH, FSH, プロラクチン濃度とBMIには関連が有りませんでした(表1)。
精液量・精子濃度・正常形態精子率はBMIが大きくなるほど小さくなり(悪くなり)精子濃度も同様の傾向がありました(表1)。

table1

次に、肥満度と精子濃度(無精子症・乏精子症・正常性液濃度)の関連を調べました。
小太りや肥満のグループでは、精液検査で無精子症や乏精子症である可能性が、標準体重である場合よりも有意に高いことがわかりました。また、やせの場合も、精子濃度に異常のある可能性が高い傾向にあることがわかりました(表2)。

table2

この研究は、体重が標準体重である事の大切さを示した結果となりました。
この結果の解釈で重要なのは、米国人の肥満度は驚くほど高いと言うことです。
調査が出来た3787人中、やせは27人(0.7%) 標準体重は966人(25.5% ) 小太りは1853人(48.9%) 肥満は941人(24.9%)と、肥満傾向が強い集団である事に注意が必要です。

日本での2015年の確定値で、20-40歳の男性を調査した結果、やせが20代で8.9%30、代で3.7%、標準体重が20代で64.5%、30代で66.0%、肥満(BMI>25)が20代で26.6%、30代で30.3%と、厚生労働省の国民健康・栄養調査では述べられています。このように、比較的肥満の患者さんの少ない日本人の検討にに、米国のデータが当てはまるか否かは、今後明らかにする必要があります。

さて、①肥満を何らかの治療で解消すれば、精液検査のデータは良くなるのでしょうか?
②肥満を何らかの治療で解消すれば、妊娠率は高まるのでしょうか?
③肥満を何らかの治療で解消すれば、出生率のデータは良くなるのでしょうか?
これらの疑問には、次回お答えいたします。