これまでにも、アルコールと妊娠に関係がある・関係がないなど様々な報告があります。今回は、同一国内で行われた2つの最新の論文を見てみましょう。
デンマークで行われた、インターネットを利用した、前向き研究があります。2007年6月から2016年1月までに9497人の女性が登録し、最終的に6120人のデータが解析対象になりました。
参加者は、男性パートナーとの関係が良好で、明らかな不妊原因や不妊治療歴がないことが条件とされました。
まず、身長体重などの基礎的身体情報・教育水準・収入・喫煙・性周期・週間のセックスの回数・タイミング法の使用の有無・妊娠歴を登録し、子どもを作ろうとし始めてから妊娠するまで(12ヶ月以内)ないしは12ヶ月間は、2ヶ月毎に、その前月のアルコール摂取についてレポートをインターネット経由で送りました。・・・これはかなりの困難を伴う研究です。
アルコール摂取量は以下のように定義されました。
1杯:ビール1瓶(330ml)、グラス一杯の赤または白ワイン(120ml)、デザートワイン(50ml)、スピリット類(20ml)
この結果、自然妊娠にとっては、アルコールを飲まない~中等度(1週間に13杯まで)は、妊娠率に大きな影響はないことが判りました。
また、飲んだアルコールの種類によっての、差はないこともわかりました。週間14杯異常のヘビードリンカーでは、相対妊娠率が低下するのですが、特に非経産婦・タイミング法を行っている女性で傾向が顕著でした。(表1)

Table1

全体の相対妊娠率をグラフ化すると(アルコールを飲まない人を1とする)と図1の様になり、信頼区間の幅は広いものの、1週間のアルコール摂取が10杯程度から、妊娠率が低下すると考えられます.

Table2

結論としては、多数の女性が参加した前向き研究では、10杯程度と超えるアルコール摂取は、自然妊娠には悪影響があるという事です。
しかしながら、この研究からは、なぜ妊娠率が下がるのかは不明です。生活習慣に関係した事柄が、いかにして妊孕性に影響を与えるかを解明するのは、なかなか難しいことだと言えます。

2017年7月に、同じデンマークから、男性または女性のアルコール摂取が、体外受精の妊娠率に与える影響について、後ろ向きの調査を行った報告が出されました。Vittrup I, et al.Reprod Biomed Online. 2017; 35: 152-160
これによれば、体外受精を受けた12981人の女性が29834周期の体外受精を受け、アルコールを飲まない人で22.4%、アルコールを1週間に7杯以上飲む人では20.4%で子どもが生まれました。
また、男性の場合はアルコールを飲まない人のパートナーは22.6%で子どもが生まれ、1週間に14杯以上飲む人でも20.2%でした。この両者には差がありませんでした。
つまり、不妊治療としての、体外受精をしているカップルにとって、アルコールを飲むことは、必ずしもマイナスに働いていないという結果でした。
アルコールはまさに「百薬の長」と言えます、しかし「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」です。適度にすることが大切でしょう。