環境騒音は、動物実験モデルでは繁殖力に影響すると結論されています。
ヒトの場合はどうでしょうか?
騒音により、ストレスが生じ、このために視床下部-下垂体-精巣系の内分泌調整機能が障害宇され、精子形成に悪影響が出るのでは?と推定されています。
この疑問に答えるデータが韓国から出てきました。(Min KB, et al. Environmental Pollution. 2017; 226: 118-124)
韓国の環境省の騒音測定結果と男性不妊の関係を調査しています。
生殖年齢を20歳から59歳と定義して、2002年の全体対象人口(男性人口)の2.2%に当たる1025340人を前向きに調査しました。
先天奇形・感染症・尿路性器の外傷・精巣がんを除外しています。
2013年まで経過観察して、男性不妊との関係を調べました。
昼間の騒音:60デシベル(dB)以下とそれ以上<ヨーロッパの環境基準に準拠>
夜間の騒音:55dB以下とそれ以上<心筋梗塞に影響があるとされる閾値>
男性不妊の定義はICD-10 code N46に従っています。用いた精液検査の基準値はなぜかWHO1999版(精子濃度の基準値が2000万/ml以上)でした。
この結果、昼間騒音が60dB以上、夜間騒音が55dB以上ではそれ以下と比較して、男性不妊の割合が高い結果でした。(図1)

Figure1

さらに、騒音の程度を4段階に分けた場解析でも、昼間も夜間も騒音が基準を超すと、どの程度の騒音でも男性不妊の割合は増加していました。(表1)

Table1

しかし、騒音の増加と男性不妊率は、相関関係は見いだせませんでした。
やはり、静かな環境は大切なようです。
日本の環境基準を示しておきましょう。この研究の基準値より、もう少し静かな環境が勧められているようです。
(表2)

Table2